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社員がセキュリティ事故を報告しやすい会社の作り方|報告先を1つに決める

公開:2026年10月16日/最終更新:同/Moshiru 岡﨑 悠太

こんなときに役立ちます

  • 社員のミスが、何日もたってから分かったとき
  • 「怪しいと思ったら報告」と言っているのに、報告が来ないとき

読み終えたあと、社内でこう言えます

「報告先を1つに決めて、責めないルールと一緒に全員へ伝えました」

結論:報告が回る会社とは、社員が「怪しい」と思った数分後に、決まった1人へ電話が届く会社です。決めるのは報告先を1つ、報告の型を3行、報告した人を責めないルールの3つです。3つ目は、担当者ではなく社長の名前で出します。専任の部署や分厚い規程は要りません。

報告が回る3つの決めごと
1報告先は1つ受ける人と番号を1つに
2報告は3行いつ・何が・今どうか
3責めない社長の名前で約束する

担当者のあなたにとって

報告の決まりがないと、事故のたびに担当者が「誰が、いつ知っていたか」を後から聞いて回ることになります。

困ることこの記事で
事故のあとで「実は先週から…」と聞かされる最初の報告が数分で届く形を作れます
誰に報告するかが、社員ごとにばらばら報告先を1つにする決め方が分かります
社長に「責めないでください」と言いにくい社長の名前で出す文例を、そのまま渡せます
取引先のシートで報告の流れを聞かれる決めた内容を、回答の材料にできます

社長や役員の方が読む場合は、「責めないルール」の章だけでも先に読んでください。社員が報告をためらう相手は、多くの場合、評価をつける側です。

報告が遅れるのは、言い出しにくいから

IPAが紹介する製造業の事例(従業員約1,000人)では、不審なメールの報告が来にくいことが悩みでした。開封したと言うと悪く受け取られ、報告・相談したくない気持ちが働きがちだとされています。

報告が遅れる流れ
怖い怒られそう
迷う誰に言えばいいか
その結果様子を見て日がたつ

ほかにも「誰に言えばいいか分からない」「大したことではないかも」という迷いが、報告を遅らせます。どれも、社員の注意力ではなく、会社の決めごとで減らせます。

国への報告の目安
3〜5日速報いずれかの部署が知った時から
30日確報不正の目的のおそれは60日

個人データの漏えいで報告が必要な場合

個人データの漏えいで国への報告が必要な場合、期限の数え始めは「会社のいずれかの部署が知った時点」です。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編、2026年6月一部改正)にそう書かれています。

社員が気づいてから担当者に届くまでに日がたつと、そのぶん準備の時間が減ります。報告が要るかの判断は漏えいしたときの報告にまとめています。

報告が遅れると減る時間
  1. 気づいた日社員が様子を見る担当者はまだ知らない
  2. 数日後担当者に届くここから調べ始める
  3. 3〜5日速報の目安数え始めは部署が知った時

報告先を1つに決める

「上司に」「総務に」「詳しい人に」と報告先がいくつもあると、社員は迷います。受けた人も、次に誰へ回すかで迷います。

報告先の決め方

迷う形

  • ×上司か総務か詳しい人か
  • ×メール・チャット・口頭

回る形

  • ○受ける人は1人
  • ○まず電話、番号は1つ

IPAの「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」も、最初の一歩は報告です。兆候を見つけたら、情報セキュリティ責任者に報告します。決め方は次の4つです。

  1. 受ける人を1人決める:ITに少し詳しい人か、総務の人が多いです。受けて、責任者に回す役です。
  2. 代わりを1人決める:受ける人が休みや移動中のときに、電話がつながる人です。
報告が届く道
  1. 1見つけた人すぐ電話する
  2. 2受ける人出ないときは代わり
  3. 3責任者社長など、決める人
  1. 電話番号を1つにする:事故のときは、メールやチャットが使えないことがあります。携帯の番号を書きます。
  2. 上司は飛ばしてよいと書く:まず受ける人へ電話し、直属の上司には受けた人から伝えます。
役誰がすること
受ける人担当者話を聞き、指示し、責任者に回す
代わり担当者が不在のとき受ける人と同じ
責任者社長など取引先・警察・公表を決める

この3人は、初動カードの連絡先の欄(担当者・不在時・責任者)と同じです。全社に配る連絡網は連絡網1枚のひな形に、社外の相談先は事故の相談先の使い分けにあります。

報告は3行でいい

報告の形が決まっていないと、社員は「きちんと説明できるまで」待ってしまいます。分かっていることを3つ言えば足りる、と先に伝えておきます。

【電話で伝える3つ】
1. いつ:〇時ごろに気づいた
2. 何が:例)メールの添付を開いた/画面がおかしい
3. 今どうしているか:例)LANを抜いた、触っていない
分からないことは「分かりません」で構いません。

電話のあとで、同じ3行をメモかチャットで残してもらうと、受けた人が責任者へ回しやすくなります。SCS評価制度★3の要求事項にも、報告の書式を整えること(6-1-1-5)が入っています。

迷ったら報告すること
  • 不審なメールを開いた
  • IDやパスワードを入れた
  • パソコンやスマホをなくした
  • 宛先を間違えて送った
  • 画面がいつもと違う

報告してよいことの例は、上の5つです。「自分のミスかどうか分からない」ものほど、報告の対象にします。

報告した人を責めないルール

IPAの事例の会社は、「不審なメールを開封しない」だけでなく「開封したら報告する」と日頃から伝えています。報告には「報告してくれてありがとう」と返し、報告を前向きに受け止める風土を目指しています。

日頃の伝え方

これだけだと

  • ×開かないで
  • ×気をつけて

こう足す

  • ○開いたら、すぐ報告
  • ○報告してくれてありがとう

このルールは、担当者ではなく社長の名前で出します。社内に掲示し、入社時にも渡せる文例です。

【報告についての約束】
20XX年X月X日 代表取締役 〇〇 〇〇

・仕事のパソコン・スマホ・メールで「何かおかしい」と
 思ったら、すぐ〇〇(電話 090-XXXX-XXXX)に電話して
 ください。出ないときは〇〇(電話 090-XXXX-XXXX)へ。
・不審なメールを開いた、宛先を間違えた、機器をなくした、
 も報告してください。
・すぐに報告した人を、そのことで叱ったり、評価を
 下げたりしません。
・原因は、人ではなく、仕組みと手順で直します。
・迷ったら電話してください。報告の早さが、いちばん
 会社を助けます。

「責めない」は「何もしない」ではありません。同じことが起きないよう、設定や手順を見直します。わざと情報を持ち出した場合などは、社内の規程で別に扱います。

社長にお願いしたいのは2つです。文例に自分の名前を入れて出すこと。そして最初の報告があったら、名前を伏せたうえで、全員の前でお礼を言うことです。

責めないの範囲
うっかり起きたこと?
はい責めず、仕組みで直す
いいえ(わざと)社内の規程で別に扱う

電話を受けた人の最初のひと言は、次の報告のしやすさにつながります。「なんで開いたの」は、その場では聞きません。

電話を受けたら
  1. 1お礼を言う報告してくれてありがとう
  2. 23つを聞くいつ・何が・今どうか
  3. 3待ってもらうそのままにして指示を待つ

原因は落ち着いてから、仕組みの話として聞きます。社員がその場でやることは、初動カードの5つで足ります。

初動カードの「4番」を本当にする

Moshiruの机に貼る初動カードは、見つけた人の動きを5つにしています。4番の「すぐ電話する」には「怒られることはありません」と書きました。

初動カードの5つ
1つながりを切るLANを抜く・Wi-Fiを切る
2触らない消さない・直さない
3メモを取る時刻・画面・直前のこと
4すぐ電話する怒られることはありません
5待つ指示があるまでそのまま

カードを配るだけでは、4番の一文を社員が信じきれないこともあります。報告先・3行の型・社長名の約束を決めてから配ると、カードの言葉と会社の約束がそろいます。

年1回、回っているかを確かめる

決めたことは、人の入れ替わりで止まります。経済産業省のSCS評価制度★3の要求事項(IPA公表、2026年3月27日版)にも、次の項目があります。

番号中身(要約)
6-1-1-2社内外の連絡先と、報告・情報共有の道筋を定める
6-1-1-4その体制を年1回以上点検する
6-1-1-5報告の書式を整える
6-1-1-6年1回以上と大きな事故のときに、事例と対応を社内に共有する
4-2-2-1入社時と年1回以上、事故のときの対応を教育・訓練する

★3を目指していなくても、このまま年間の予定にできます。

1年の回し方
  1. 入社時カードと約束を渡す報告先を口頭でも伝える
  2. 年1回電話をかけてみる番号と受ける人を確かめる
  3. 報告のあとお礼と共有名前を出さずに社内へ

社内に共有するときは、報告した人の名前を出しません。「早く報告があったので、ここで止められた」と、早さを中心に伝えます。

標的型メール訓練をするなら、開いた人の割合だけでなく、報告した人の割合と早さも見ます。IPAの事例の会社も、報告率を測っています。

よくある質問

社員が5人ほどでも、報告先を決める必要がありますか?
はい。人数が少ないと「社長に言えばいい」となりがちです。社長が出られないときの代わりを1人決めておくと、電話がつながらない時間がなくなります。
同じミスを繰り返す社員も、責めないのですか?
すぐに報告したことは責めません。繰り返す場合は、その人の注意だけに頼らず、設定や手順で防げないかを見直します。わざと行った場合は、社内の規程で別に扱います。
夜間や休日の報告はどうしますか?
受ける人と代わりの携帯に、時間に関係なく電話してよいと約束に書いておきます。社内で受けきれない時間帯は、社外の窓口を連絡先に足す方法もあります。

この記事のまとめ

次に読む

  1. 次の場面:取引先に聞かれたセキュリティ教育の記録の残し方と回答例取引先に社員教育の実施を聞かれたとき。回答例3通りと受講記録の表
  2. 同じ場面・BPO・人材委託先のセキュリティを確かめる方法取引先に聞くべき質問20と、チェックシートの作り方(発注側向け)。
  3. 教科書で仕組みから(9-5)再発防止策の書き方事故の報告書に、注意喚起で終わらない再発防止策を書く

報告の受け口を決めて、事故の夜を一人で抱えない

Moshiruは、打合せなしでテキストだけでお受けします。まずは無料の初動カードに報告先を書き込み、全員の机に貼ってください。報告を受けて判断に迷うときは、駆け込み寺に状況を送れば、24時間受付・30分以内に最初の指示を無料でお送りします。

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参考にした資料

  1. IPA プラクティス・ナビ「悩み(9) インシデント対応の初動における社内での情報共有に不安がある」(2026年4月)
  2. 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」3-5-3-3・3-5-3-4(2026年6月一部改正)
  3. IPA「SCS評価制度 ★3・★4 要求事項・評価基準」(2026年3月27日版)
  4. IPA「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」(中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版 付録)