Moshiru

セキュリティの手引き

カード会社から「情報漏洩の懸念」と連絡が来たら|ECサイトが当日やること

公開:2026年10月14日/最終更新:2026年10月14日/Moshiru 岡﨑 悠太

結論:当日は①連絡の中身を記録する ②カード会社・決済代行会社の指示に従い、カード決済を止める ③サイトのファイルとログを消さずに残す。そのあと、フォレンジック調査、個人情報保護委員会への報告、お客さまへの通知と進みます。自分の判断でサイトを作り直したり、ファイルを消したりしないことが大切です。

連絡が来た日の順番
  1. 1記録する誰から・何を
  2. 2決済を止める指示に従って
  3. 3消さずに残すファイルとログ
  4. 4調査と報告へ

なぜ「うちはカード情報を持っていない」のに起きるのか

カード番号を自社で保存しない「非保持化」をしていても、漏えいは起きます。業界の指針をまとめるクレジット取引セキュリティ対策協議会は、非保持化した加盟店でも、サイトの弱点を突かれて改ざんされ、カード情報を盗まれる漏えいが主流になりつつあるとしています。

非保持化でも漏れる流れ
サイトの弱点更新されていない
改ざん入力画面が書き換えられる
その結果入力されたカード情報が外へ

同じ資料は、オープンソースのEC構築パッケージやCMSの設定不備と弱点を狙った攻撃が多いとし、オープンソースを使う加盟店では、導入後のセキュリティ更新は加盟店の責任だとしています。

思い込みと実際

思い込み

  • ×カード番号は保存していない
  • ×だから漏れない

実際

  • ○入力画面が書き換えられる
  • ○入力のたびに外へ送られる

当日やること

  1. 連絡の中身を記録する:誰から、いつ、何と言われたか。電話なら相手の名前と折り返し先を聞きます。
  2. 指示に従ってカード決済を止める:協議会の指針は、漏えい元のネットワークからの切り離しと、カード決済の一時停止を、カード会社や決済代行会社の要請に従って行うとしています。
【連絡を受けたときの記録】

受けた日時:○月○日 ○時○分
相手:(例)○○カード株式会社 加盟店担当 □□様/決済代行 ○○株式会社 □□様
折り返し先:電話 ○○-○○○○-○○○○
言われたこと:(例)当社サイトで使われたカードに不正利用が続いている
求められたこと:(例)カード決済の停止/調査会社の手配
期限:(例)○月○日までに返事
社内の窓口:□□(電話 ○○-○○○○-○○○○)

相手の言葉は、そのまま書き写します。分からない欄は「不明」とし、実態と違う内容をひな形のまま写さないでください。

  1. 消さずに残す:サイトのファイル、データベース、サーバーのログを、そのまま残します。サーバー会社と制作会社に「消さないでほしい」と伝えます。
  2. 窓口を1人に決める:カード会社、決済代行会社、制作会社、サーバー会社との連絡を1人に集めます。
当日やらないこと・やること

やらない

  • ×サイトを作り直す
  • ×ファイルを消す
  • ×決済を続ける

やる

  • ○指示どおり決済を止める
  • ○ログを残してもらう
  • ○窓口を1人に

そのあとの流れ:調査・報告・再開

協議会の指針では、漏えい時の対応として、ネットワークからの切り離しと決済の一時停止のあと、フォレンジック調査、PCI DSS準拠などの確認、再発防止の措置が続きます。

決済の再開までの流れ
  1. 1決済を止める
  2. 2フォレンジック調査何が起きたか
  3. 3再発防止PCI DSS準拠など
  4. 4再開を協議SAQ等を出す

決済の再開は、再発防止の中身をカード会社や決済代行会社と協議し、SAQ(自己問診)などを出したうえで、カード会社が判断します。自社だけで再開を決めることはできません。

同じ協議会の導入ガイドは、カード取引の停止に加えて、調査から再開の審査まで「かなりの時間」がかかるとしています。

加盟店に請求されうる費用
1調査の費用フォレンジック調査
2不正利用の補償
3カードの差し替え被害カードの再発行

導入ガイドが挙げている費用

また、調査費用、不正利用の被害の補償額、被害にあったカードの差し替え費用などが加盟店に請求され、大きな負担になりうると書いています。

個人情報保護委員会への報告と、お客さまへの通知

個人情報保護委員会は、ECサイトからクレジットカード番号を含む個人データが漏れた場合を、報告が必要な例に挙げています。不正に使われると財産的な被害が出るおそれがあるためで、件数は問いません。

個人情報保護委員会への報告の期限
3〜5日速報発覚日から
30日確報発覚日から
60日確報不正の目的のおそれがある場合

サイトの改ざんのように不正の目的によるおそれがあるときは、確報の期限は60日です。カード番号の下4桁と有効期限だけの組み合わせなら、直ちに報告の対象にはならないとされています。

報告の対象か
漏れたのは下4桁と有効期限だけ?
はい直ちには対象にならない
番号を含む・分からない報告の対象として準備

お客さまには、状況に応じて速やかに、何が起きたか、漏れた項目、原因を知らせます。一人ひとりに知らせるのが難しいときは、ホームページでの公表と問い合わせ窓口で代えることができます。

お客さまに知らせる内容
  • 何が起きたか(概要)
  • 漏れた項目
  • 原因

難しいときは公表と問い合わせ窓口で代える

公表の時期と文面は、カード会社・決済代行会社と調査会社の状況を確かめてから決めます。法的な判断が要るところは、弁護士に相談してください。報告の考え方は漏えいの報告の手引きにまとめています。

よくある質問

まだ「懸念」の段階です。報告は確定してからでいいですか?
個人情報保護委員会の報告は、漏えいの「おそれ」がある段階から対象になります。速報は分かっている範囲で出し、あとで確報を出す形です。期限は発覚日から数えます。
決済代行会社のページに飛ばす方式です。それでも漏れますか?
飛ばす前の自社の画面が書き換えられると、入力内容が外へ送られることがあります。非保持化していても、サイトの弱点への対策は続ける必要があります。

連絡が来たら、そのまま文字で送ってください

Moshiruの代表は、大手自動車メーカーでセキュリティインシデント対応のチームリーダーを務めてきました。打合せはせず、テキストのやり取りだけで、当日の動きと報告の準備を整理します。

事故が起きたら相談する24時間受付・30分以内に返信ホームページが改ざんされたら復旧の順番

参考にした資料

  1. クレジット取引セキュリティ対策協議会「クレジットカード・セキュリティガイドライン【6.1版】」(2026年3月)
  2. クレジット取引セキュリティ対策協議会「EC加盟店におけるセキュリティ対策 導入ガイド」(2.1版、2026年3月)
  3. 個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」
  4. 個人情報保護委員会「漏えい等報告・本人への通知の義務化について」