セキュリティの手引き
フォレンジック調査の費用相場|要るケースと要らないケース
公開:2026年10月14日/最終更新:2026年10月14日/Moshiru 岡﨑 悠太
結論:JNSAの調査では、パソコンとサーバー数台なら、初動対応と合わせて300〜400万円程度です。被害が広がると数千万円以上になることもあります。個人データが盗まれたおそれがあり、報告に事実が要るときは頼みます。偽の警告を閉じただけなら要りません。
調査費用の目安(JNSA)300〜400万円数台の調査初動対応と合わせて
数千万円以上広がった場合調べる台数が増える
フォレンジック調査とは
パソコン、ネットワーク機器、クラウドに残った記録を専門家が調べ、事故の原因と被害の範囲を突き止める調査です。JNSAの報告書では、数週間以上かかることもあるとされています。
調査で分かること- どこから入られたか(原因)
- どこまで及んだか(範囲)
- データが持ち出されたか
記録が消えていると分からないこともある
頼み先は、JNSAの「サイバーインシデント緊急対応企業一覧」や、IPAの「情報セキュリティサービス基準適合サービスリスト」のデジタルフォレンジックサービスの欄で探せます。どちらも、載っている会社を保証するものではありません。
頼み先を探す一覧1JNSA緊急対応企業一覧
2IPA基準適合サービスリスト
載っていても保証ではない。中身と料金を確かめる
費用の相場
JNSAの「インシデント損害額調査レポート 第2版」(2024年2月)は、16社に聞いた料金を載せています。見積もりの単位が会社ごとに違う点に注意が要ります。
| 項目 | 報告書にある金額の例 |
| 初動対応 | 10万円/台、90万円/台、100万円、144万円、150万円、200万円/1週間、300〜500万円/5営業日など |
| パソコン1台の調査 | 72万〜180万円(パソコンとサーバーを分けている会社) |
| サーバー1台の調査 | 120万〜300万円程度 |
| ファスト・フォレンジック(全台から必要な記録だけ抜き出す) | 1台3万〜60万円、または台数まとめて約212万〜500万円 |
| 時間単価 | 15,000円〜/時間 |
| 過去の高額な例 | 1,000万円〜約5億円 |
報告書のまとめでは、調べる端末は数台のことが多く、初動対応と合わせて概ね300〜400万円程度とされています。感染が広がると数千万円以上に及ぶこともあります。
1台あたりの調査費用の幅パソコン72万〜180万円
サーバー120万〜300万円
ファスト(1台)3万〜60万円
棒は上限の金額。会社ごとに単位が違う
架空のモデルケースで見る
同じ報告書には、架空のモデルケースがあります。調査費用は、サポート詐欺で100万円、ECサイトのカード情報の漏えい(サーバー1台)で300万円、Emotet(端末3台とサーバー1台)で500万円です。
モデルケースの調査費用サポート詐欺100万円
ECサイトの漏えい300万円
Emotet500万円
JNSAの報告書の架空の例
大きな会社のランサムウェア被害の例では、調査費用は1億円とされています。台数が増えるほど、費用は大きくなります。
要るケース・要らないケース
Moshiruの目安は下の表のとおりです。決め手は「報告や説明に、調べた事実が要るか」です。
| 状況 | 目安 | 理由 |
| 顧客の個人データやカード情報が盗まれたおそれがある | 頼む | 個人情報保護委員会への報告に、個人データの項目、人数、原因を書く |
| ランサムウェアで複数台やサーバーが暗号化された | 頼む | 入口をふさがないと、同じ経路で再び入られるおそれがある(警察庁) |
| サポート詐欺で遠隔操作され、長くつながっていた | 相談して決める | ファイルを送られたかの記録を確かめる必要がある(JNSAの座談会) |
| ウイルス対策ソフトが検出し、1台だけで止まった | まず社内で確かめる | 全台のスキャンと記録の確認で、広がりがないかを見る |
| 偽の警告が出ただけで、電話していない | 要らない | パソコンは感染していない(IPA) |
迷うときは、初動対応だけを先に頼み、調べる範囲を決めてから本調査に進む方法もあります。
頼むかの分かれ道報告や説明に、調べた事実が要る?
要る調査会社に見積もりを取る
分からない初動だけ頼み、範囲を決める
要らない社内の記録で終える
頼むときに決めておくこと
JNSAの座談会では、契約後に期間が延び、追加料金を重ねて求められた例や、「暗号化されたデータは戻せる」と軽く言う業者の例が語られています。見積もりの段階で、次の点をそろえます。
見積もりで確かめること- 調べる台数と範囲
- 料金の単位(台・週・時間)
- 追加料金がかかる条件
- 報告書の中身と期日
データの復旧も頼むなら、IDFやJNSAなどが出した「データ被害時のベンダー選定チェックシート」が使えます。
業者を選ぶとき
サイバー保険に入っているなら、契約を確かめます。JNSAの報告書では、国内のサイバー保険は事故対応の費用を補償し、調査費用も概ね対象になるとされています。身代金は対象外です。
よくある質問
調査すれば、暗号化されたデータも戻りますか?
調査は原因と範囲を調べるもので、データを戻す作業とは別です。JNSAの座談会でも、暗号化されたデータは基本的には解読できないと語られています。戻すのはバックアップからが基本です。
保守を頼んでいるIT会社に調べてもらえばいいですか?
その会社が専門の調査をしているかを確かめてください。JNSAの報告書には、設定の不備が原因だった場合に、構築した会社との間で責任の所在がもめた例が載っています。
Moshiruは調査をしてくれますか?
調査そのものは行いません。初動72時間パック(30万円・税別)で、調査会社への依頼文と、見積もりを比べる観点をまとめてお渡しします。
参考にした資料
- JNSA「インシデント損害額調査レポート 第2版」(2024年2月)
- JNSA「サイバーインシデント緊急対応企業一覧」
- IPA「情報セキュリティサービス基準適合サービスリスト」
- デジタル・フォレンジック研究会ほか「データ被害時のベンダー選定チェックシート Ver.1.0」
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
- 警察庁「ランサムウェア被害防止対策」
- IPA「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)対策特集ページ」