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会社のセキュリティ教科書 第8部 8-2

準委任と請負の違いとは|業務委託契約とNDAのセキュリティ条項の見方

公開:2026年10月15日/最終更新:同/Moshiru 岡﨑 悠太

こんなときに役立ちます

  • 業務委託の契約書やNDAのセキュリティ条項を確認するとき
  • システム開発や保守を外部に頼むとき、請負と準委任のどちらで契約するか迷ったとき
  • 取引先のチェックシートで「委託先と秘密保持契約を結んでいますか」と聞かれたとき

読み終えたあと、社内でこう言えます

「委託契約に秘密保持など4つの条項が入っているか、確認しました」

結論:準委任とは、法律行為でない事務の処理を任せる契約で、仕事の完成ではなく事務をきちんと行うことが中心です。請負は、仕事を完成させることを約束する契約です。「業務委託契約」という名前でも、中身がどちらに当たるかで責任の範囲が変わります。セキュリティの面では、秘密保持・再委託の承認・事故時の報告・終了時の返却と消去の4つが契約に入っているかを最初に確かめます。この記事は一般的な説明です。個別の契約の判断は弁護士に相談してください。

委託契約では、請負か準委任かを確かめ、秘密保持・再委託の承認・事故時の報告・終了時の返却と消去の4つの条項を確認する

準委任と請負の違いは?

民法では、請負は第632条、委任は第643条、準委任は第656条に定められています。準委任は、委任の規定を「法律行為でない事務の委託」に当てはめたものです。システムの保守、運用の代行、コンサルティングなどは準委任で結ばれることが多く、決まった成果物を作る開発は請負で結ばれることが多いです。

項目請負準委任
約束するもの仕事の完成(第632条)事務の処理(第656条)
受ける側の義務完成させて引き渡す善良な管理者の注意(善管注意義務)をもって事務を行う(第644条)
報酬仕事の結果に対して払う事務を行ったことに払う型と、成果に払う型がある(第648条の2)
結果に不足があるとき契約不適合責任。直す・減額・損害賠償・解除を求められる(不適合を知ってから1年以内の通知が必要。第637条)原則として完成の責任は負わない。注意を怠った場合は債務不履行の問題になる
再委託民法に制限の規定はなく、契約で決める委任者の許諾か、やむを得ない事由がなければできない(第644条の2)

2020年4月施行の改正民法で、成果に対して報酬を払う準委任(第648条の2)が明文化されました。名前ではなく、何を約束し、何に対して払うかで性質が決まる点を押さえておきます。

常駐の委託で気をつける「指揮命令」

請負や準委任で人が自社に常駐する場合、自社の社員が委託先の作業者に直接、作業の順番や方法を指示すると、労働者派遣とみなされるおそれがあります(いわゆる偽装請負)。厚生労働省の「37号告示」に関する疑義応答集が、その目安を示しています。セキュリティの指示(入館のルール、持ち込み禁止など)は、契約に書いたうえで委託先の責任者を通して伝えるのが基本です。

委託契約に入れるセキュリティ条項は?

委託先は、自社の情報を自社の外で扱います。委託先で起きた事故でも、取引先や顧客から見れば自社の事故です。契約書を確認するときは、次の表の条項があるかを見ます。

条項確かめること
秘密保持対象の情報、目的外の利用の禁止、契約終了後も続く期間
安全管理措置アクセス権の管理、暗号化、持ち出しの制限など、求める水準
再委託事前の書面承認が必要か。再委託先にも同じ義務を課すか
事故時の報告漏えいなどを知ったら、いつまでに誰へ報告するか
報告・監査取扱状況の報告を求めたり、確認したりできるか
終了時の返却・消去データの返却・消去と、その証明書を出してもらえるか
損害賠償上限額の定め。情報漏えいを上限の例外にするか

終了時の手続きは委託の終了の節、委託先の事故が自社に広がる仕組みはサプライチェーンリスクの節で詳しく扱います。

個人データを預けるときは「委託先の監督」が義務

個人情報保護法第25条は、個人データの取扱いを委託する場合、委託先を必要かつ適切に監督することを求めています。なお、利用目的の範囲内で委託に伴って渡す場合は、本人の同意がいる「第三者提供」には当たりません(第27条第5項第1号)。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、監督の中身として次の3つを挙げています。

  1. 適切な委託先の選定:委託先の安全管理措置が、自社に求められる水準と同等であることを事前に確かめる。
  2. 委託契約の締結:安全管理措置の内容と、委託元が取扱状況を把握できることを契約に入れることが望ましい。
  3. 取扱状況の把握:定期的な監査などで、契約の内容が守られているかを確かめることが望ましい。再委託の場合も、事前の報告や承認を受けることが望ましい。

NDA(秘密保持契約)で見るところは?

NDA(Non-Disclosure Agreement、秘密保持契約)は、見積もりや提案の段階で、本契約の前に結ぶことが多い契約です。経済産業省の「秘密情報の保護ハンドブック」は、情報を開示する前に秘密保持契約を結ぶことを勧め、契約書の参考例も載せています。確認するのは次の点です。

  1. 秘密情報の範囲:何が秘密かを、資料名や「秘」の表示などで特定できるか。
  2. 例外:すでに公知の情報、相手が独自に持っていた情報などを除く定めがあるか。
  3. 目的外利用の禁止:「本件の検討のためだけに使う」と書かれているか。
  4. 開示してよい人:相手の社員や再委託先に見せてよい範囲と、その人たちへの義務の課し方。
  5. 期間:契約の有効期間と、終了後も秘密保持が続く期間。
  6. 返却・消去:検討が終わったときや求めたときに、返却・消去してもらえるか。

顧客リストやノウハウを不正競争防止法の「営業秘密」として守るには、秘密として管理されていること、事業に役立つこと、公に知られていないことの3つが必要です(第2条第6項)。NDAは、秘密として管理していることを示す材料の一つになります。詳しくは著作権法と不正競争防止法の節で扱います。

契約書のひな形はどこにある?

一から書くより、公的なひな形と比べて抜けを探すほうが早く確実です。

資料向いている場面
IPA「情報システム・モデル取引・契約書」第二版(2020年12月)システム開発の委託。請負と準委任の使い分けや、セキュリティ仕様の決め方の考え方がある
同 第二版追補版パッケージ・SaaSの活用、保守・運用の委託
経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」の参考例NDA、社員の誓約書、委託先との秘密保持の条項

自社が委託する側で、資本金や従業員数などの条件に当たる取引では、中小受託取引適正化法(取適法。旧下請法で、2026年1月1日施行)の義務がかかることがあります。対象になるかは、公正取引委員会の資料で確かめてください。

たとえば社員25人の通販会社では(架空の例)

自社サイトの保守を外部の制作会社に準委任で、出荷を物流会社に頼んでいる社員25人の通販会社を考えます。どちらも顧客の氏名と住所を扱います。この会社なら、契約書を次の順に確かめます。

  1. 契約が請負か準委任か、何に対して報酬を払うかを確かめる
  2. 秘密保持と、個人データの安全管理措置の条項があるかを見る
  3. 再委託に事前の書面承認がいるか。制作会社が別のサーバー会社を使っていないかも聞く
  4. 漏えいを知ったときの報告の期限(例:知ってから〇〇日以内)が書かれているかを見る
  5. 契約終了時に、データの消去と証明書の提出を求められるかを確かめる

足りない条項は、次の更新のときに覚書で追加する方法もあります。文言の調整は弁護士に相談してください。

チェックシートではこう聞かれる

よくある設問答え方の例
委託先と秘密保持契約を締結していますか。はい。情報を扱うすべての委託先と、業務の開始前に秘密保持の条項を含む契約を結んでいます。
再委託は事前承認制にしていますか。はい。契約で、再委託には当社の書面による事前承認が必要と定めています。
委託先の情報管理の状況を定期的に確認していますか。いいえ。現在は契約時の確認のみです。〇月から、年1回、取扱状況の報告を求めます。
委託終了時のデータの返却・消去を確認していますか。はい。契約で消去を義務づけ、終了時に消去証明書を受け取っています。

委託先の管理について広く聞かれたときの答え方は、委託先管理の答え方にまとめています。

試験ではここが問われる

SG・支援士・Security+ 5・CISSP 1

  • 請負・準委任・派遣の区別:請負は完成の義務、準委任は事務の処理(善管注意義務)。派遣は派遣先が労働者に指揮命令する。請負・準委任で発注者が直接指揮命令すると偽装請負の問題になります。
  • 再委託:準委任は委任者の許諾かやむを得ない事由が必要(民法第644条の2)。個人データでは再委託先まで監督が及ぶようにします。
  • 委託先の監督:個人情報保護法第25条。選定・契約・取扱状況の把握の3つ。
  • NDA:秘密情報の特定、目的外利用の禁止、返却・消去、存続期間。CISSPでは契約上の管理策(NDA、SLA)として出ます。

確認問題

問1 民法上の請負と準委任の違いとして、最も適切なものはどれですか。

  1. ア 請負は事務の処理を約束し、準委任は仕事の完成を約束する
  2. イ 請負は仕事の完成を約束し、準委任は事務の処理を善管注意義務をもって行うことを約束する
  3. ウ どちらも、発注者が受注者の作業者に直接指揮命令できる
  4. エ 準委任では、受任者は委任者の許諾なく自由に再委託できる
答えと解説
正解:イ 請負は完成(第632条)、準委任は事務の処理(第656条、善管注意義務は第644条)です。アは逆です。ウは労働者派遣の特徴で、請負・準委任で行うと偽装請負の問題になります。エは第644条の2に反します。

問2 社員30人の会社(架空)が、システム運用を準委任で委託し、委託先の技術者2人が常駐しています。自社の情報システム担当者の行動として、最も適切なものはどれですか。

  1. ア 毎朝、常駐の技術者に直接その日の作業の順番と方法を指示する
  2. イ 入館や持ち込みのルールを契約に定め、変更は委託先の責任者を通して伝える
  3. ウ 常駐の技術者を自社の社員と同じ勤怠管理の対象にする
  4. エ 契約書は交わさず、口頭で秘密を守るよう伝える
答えと解説
正解:イ ルールは契約に書き、指示は委託先の責任者を通すのが基本です。アとウは発注者が直接指揮命令・労務管理をしており、偽装請負と判断されるおそれがあります。エでは秘密保持の義務の範囲があいまいになります。

問3 顧客の個人データの入力作業を外部に委託する場合の説明として、最も適切なものはどれですか。

  1. ア 委託は第三者提供に当たるため、必ず顧客全員の同意を取る
  2. イ 委託先と契約すれば、委託元にはそれ以上の義務はない
  3. ウ 委託元は、委託先の選定・契約・取扱状況の把握を通じて、必要かつ適切な監督を行う
  4. エ 委託先が再委託する場合、委託元は関与できない
答えと解説
正解:ウ 個人情報保護法第25条とガイドラインの内容です。アは、利用目的の範囲内で委託に伴って渡す場合は第三者提供に当たりません(第27条第5項第1号)。イは監督の義務を無視しており、エは再委託先まで監督が及ぶようにするというガイドラインの考え方に反します。

よくある質問

業務委託契約は、請負と準委任のどちらになりますか?
契約の名前ではなく、中身で決まります。仕事の完成を約束し結果に報酬を払うなら請負、事務の処理を任せるなら準委任に当たるのが基本です。判断に迷う契約は、弁護士に確認してください。
NDAを結んでいれば、委託先の情報管理は安心ですか?
いいえ、NDAだけでは足りません。NDAは秘密を守る約束ですが、アクセス権の管理や暗号化のような具体的な安全管理措置、事故時の報告、終了時の消去までは決めていないことが多いです。本契約にこれらの条項を入れ、定期的に状況を確かめます。
相手の会社のひな形で契約してもよいですか?
使ってもかまいませんが、自社に不利な条項や抜けがないかを確かめてから結びます。この記事の表の条項と、IPAのモデル契約書などの公的なひな形を並べて比べると、抜けが見つけやすくなります。

この記事のまとめ

今の契約からの回答づくりは任せて、確認だけに

Moshiruは、打合せなしでテキストだけでお受けします。取引先から届いたセキュリティチェックシートの「委託先管理」「秘密保持」の設問に、御社の契約と運用に合わせた回答を作ってお返しします。足りない項目には、予定の書き方を添えます。契約書の法的な判断はお受けしていません。

回答代行を見る20問まで1.5万円・打合せなしメニューにないことを頼む文面で合意するまで料金はかかりません

参考にした資料

  1. e-Gov法令検索「民法」第632条・第637条・第643条・第644条・第644条の2・第648条の2・第656条
  2. e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」第25条・第27条
  3. 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」3-4-4 委託先の監督(2026年6月一部改正)
  4. e-Gov法令検索「不正競争防止法」第2条第6項
  5. IPA「情報システム・モデル取引・契約書」第二版(2020年12月)・追補版
  6. 経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック ~企業価値向上に向けて~」概要資料
  7. 厚生労働省「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集」
  8. 公正取引委員会「取適法(中小受託取引適正化法)」(2026年1月1日施行)