Moshiru

会社のセキュリティ教科書 第3部 3-4

PKIとデジタル証明書とは|サイトの鍵マークの裏側

公開:2026年10月15日/最終更新:同/Moshiru 岡﨑 悠太

こんなときに役立ちます

  • サイトの証明書の期限切れの警告が出たとき/SSL証明書を選ぶとき
  • 制作会社やレンタルサーバーから「証明書の有効期間が短くなります」と案内が来て、何をすればいいか知りたいとき
  • SGや支援士、Security+の勉強で、PKI・CRL・OCSPを実務の言葉でつかみたいとき

読み終えたあと、社内でこう言えます

「うちのサイトの証明書は、有効期限を◯日に確認済みです」

結論:PKI(公開鍵基盤)は、「この公開鍵は本当にこのサイトのものか」を第三者が保証する仕組みです。保証する役が認証局(CA)で、保証の書面がデジタル証明書です。ブラウザの鍵マークが示すのは通信が暗号化されていることで、サイトの運営者が信頼できることまでは示しません。証明書の最長の有効期間は、2026年3月15日から200日に短くなりました。2029年3月には47日になるため、更新は手作業ではなく自動にするのが前提になります。

ルート証明書から中間CA証明書、サーバ証明書へと信頼がつながり、失効の確認と有効期間の管理で支えられるPKIの仕組み

PKIとは:鍵マークの裏で起きていること

暗号化の通信では、相手の公開鍵を使います(公開鍵の考え方は暗号の基本で扱いました)。ここで問題になるのが、受け取った公開鍵が本物かどうかです。偽のサイトが自分の公開鍵を渡してきたら、暗号化しても相手は偽物のままです。

そこで、信頼できる第三者が「この公開鍵はこのドメインの持ち主のものです」と署名して保証します。この第三者が認証局(CA)、保証の書面がデジタル証明書(公開鍵証明書)です。証明書・認証局・失効の確認などをまとめた仕組み全体をPKIと呼びます。

登場するもの役割
ルート証明書信頼の出発点(トラストアンカー)。OSやブラウザにあらかじめ入っている。
中間CA証明書ルートから権限を受けた認証局の証明書。実際のサーバ証明書は多くがここから発行される。
サーバ証明書自社サイトに入れる証明書。ドメイン名と公開鍵が書かれ、中間CAが署名している。
クライアント証明書人や端末に入れる証明書。社外から社内システムに入れる端末を限るときなどに使う。

ブラウザは、サーバ証明書→中間CA証明書→ルート証明書と署名をたどり、手元のルート証明書につながるかを確かめます。この連なりを証明書チェーンと呼びます。署名の仕組みはデジタル署名の節で説明しています。

証明書に書かれていること

DV・OV・EVの違いと、鍵マークが示すもの

サーバ証明書は、認証局が発行前に何を確かめたかで3種類に分かれます。暗号化の強さは、種類によって変わりません。

種類発行前に確かめること向いている場面
DV(ドメイン認証)申請者がそのドメインを管理していること。DNSへの登録などで確かめる。会社案内のサイト、ブログ。無料のものも多い。
OV(組織認証)ドメインの管理に加え、組織が実在すること。問い合わせフォームや会員ページのある企業サイト。
EV(拡張認証)OVより厳しい手順で、組織の実在と申請の正当性を確かめる。金融機関など、取引先から求められる場合。

かつてはEV証明書のサイトで、アドレスバーに会社名が緑色で出ていました。しかしGoogle ChromeはChrome 77(2019年9月)で、この表示をアドレスバーから外しました。会社名は、サイトの情報を開いた画面で確かめる形に変わっています。さらにChrome 117(2023年9月)では、鍵マークそのものを別のアイコンに置き換えました。

Googleは理由として、2021年の調査で鍵マークの正確な意味を理解していた人が11%だったことを挙げています。鍵マークは「通信が暗号化されている」印にすぎません。偽サイトでもDV証明書は取れるため、鍵マークがあるから安全なサイト、とは言えないのです。社員教育でもこの点を伝えてください。

失効:期限の前に使えなくする仕組み(CRLとOCSP)

証明書は、期限の前に無効にすることがあります。秘密鍵が漏れた、ドメインを手放した、誤って発行された、といった場合です。これを失効と言います。失効したかどうかを確かめる方法は、主に2つあります。

方式仕組み弱点
CRL(証明書失効リスト)認証局が失効した証明書の一覧を定期的に公開する。一覧が大きくなる。公開の間隔のぶん、反映が遅れる。
OCSP証明書1枚ごとに、認証局へその場で問い合わせる。どのサイトを見ているかが認証局に伝わる。問い合わせ先が止まると確認できない。

近年はCRLに寄せる流れです。証明書のルールを決める業界団体CA/Browser Forumは、2023年にOCSPを任意とし、CRLを必須にしました。無料の証明書を発行するLet's Encryptは、利用者のプライバシーを主な理由に、2025年8月6日にOCSPの提供を終えています。

試験ではCRLとOCSPの違いがよく問われます。実務では、自社で失効の確認を設定する場面は多くありません。大事なのは、秘密鍵が漏れたら認証局に失効を申請すると覚えておくことです。

有効期間はどこまで短くなるか:200日→100日→47日

サーバ証明書の最長の有効期間は、CA/Browser Forumの基本要件(Baseline Requirements)で決まります。2025年4月に可決された投票SC-081で、次のように段階的に短くすることが決まりました。

発行日最長の有効期間ドメイン確認の使い回し
2026年3月14日まで398日398日
2026年3月15日から200日200日
2027年3月15日から100日100日
2029年3月15日から47日10日

「ドメイン確認の使い回し」は、一度確かめたドメインの管理を、次の発行でも有効とみなせる日数です。2029年以降は、ほぼ毎回の更新でドメインの確認をやり直すことになります。

期間を短くする狙いは、漏れた鍵や古い情報が使われ続ける期間を縮めることです。失効の確認がうまく働かない場合でも、短い期限が安全網になります。Let's Encryptも独自に、2028年2月までに標準の有効期間を90日から45日へ縮める予定を公表しています。

会社がやること

  1. 証明書の一覧を作る:自社サイト、ECサイト、メールサーバー、社内の機器など。どこで何の証明書を使っているかを書き出す。
  2. 更新を自動にする:ACME(証明書の発行と更新を自動で行う標準の手順)に対応したサーバーや、レンタルサーバーの自動更新を使う。
  3. 担当と通知先を決める:自動更新が失敗したときの通知を、辞めた人ではなく今の担当に届くようにする。
  4. 制作会社との分担を書面にする:更新を誰が行い、誰が費用を持つかを契約や発注書で決めておく。

期限切れの警告が出たとき

証明書の期限が切れると、ブラウザは「接続がプライベートではありません」などの警告を出します。自社サイトで出た場合と、他社サイトで出た場合で、やることが違います。

場面やること
自社サイトで出た証明書の期限と発行元を確かめ、サーバーの管理者(自社・制作会社・レンタルサーバー)に更新を依頼する。直ったら自動更新が止まった原因も確かめる。
他社や取引先のサイトで出た先へ進まず、IDやカード番号を入れない。相手に知らせる場合は、サイトのURLと日時を添える。
社内の機器の管理画面で出た機器が最初から持つ自己署名の証明書のことが多い。機器の管理者に、正しい画面か確かめてもらう。

たとえば社員30人の工務店では(架空の例)

施工事例を載せたサイトを、レンタルサーバーで運用している工務店を考えます。証明書は無料のDV証明書で、自動更新になっていました。ある月、ドメインの管理会社を変えたあと、自動更新が止まりました。

2か月後、問い合わせフォームに警告が出て、見込み客から「サイトが危ないと出る」と連絡が来ます。原因は、移管のときにDNSの設定が変わり、ドメインの確認に失敗していたことでした。更新の失敗を知らせるメールは、退職した前任者の宛先に届いていました。

この会社がやるべきだったのは、通知先を共有のアドレスにすることと、DNSを変えたあとに更新を試すことの2つです。有効期間が短くなるほど、このような止まり方に早く気づく仕組みが大事になります。

証明書を選ぶときの考え方

中小企業のサイトであれば、多くの場合、DVで十分です。暗号化の強さは同じで、違いは「発行前に何を確かめたか」だけだからです。ただし、次に当てはまる場合はOVやEVも検討します。

選ぶ基準として、種類より大事なのは自動で更新できるかです。OVやEVは組織の確認が入るため、更新のたびに手続きが残ることがあります。年に何回も更新が来る時代には、手作業の手順がそのまま止まる原因になります。購入前に、発行元とサーバーが自動更新に対応しているかを確かめてください。

チェックシートではこう聞かれる

よくある設問答え方の例
Webサイトの通信をSSL/TLSで暗号化していますか。はい。全ページをHTTPSで提供し、HTTPでのアクセスはHTTPSへ転送しています。
サーバ証明書の有効期限を管理していますか。はい。証明書は自動更新にしており、更新の失敗は共有のアドレスに通知されます。証明書の一覧を年2回見直しています。
秘密鍵が漏えいした場合の手順を定めていますか。いいえ。現在は未整備で、〇月までに、認証局への失効の申請と再発行の手順を文書にする予定です。

証明書の更新を制作会社に任せている場合は、「委託先が管理している」と書き、契約での取り決めを添えると伝わります。書き方はチェックシートの回答の書き方を参考にしてください。

試験ではここが問われる

SG・支援士・Security+ 1・CISSP 3・AWS 5

  • 証明書が保証するもの:公開鍵と、その持ち主(ドメインや組織)の結びつき。認証局のデジタル署名で保証します。
  • 信頼の連なり:ルート証明書(トラストアンカー)→中間CA証明書→サーバ証明書。ブラウザは手元のルート証明書までたどれるかを確かめます。
  • CRLとOCSP:CRLは失効した証明書の一覧、OCSPは1枚ごとの問い合わせ。どちらも「期限前に無効にした証明書」を見分ける仕組みです。
  • DV・OV・EV:違いは発行前の確認の厳しさで、暗号化の強さではありません。
  • 英語:Certificate Authority、Certificate Revocation List、Online Certificate Status Protocol。AWSではACM(AWS Certificate Manager)での証明書の管理と自動更新が問われます。

確認問題

問1 デジタル証明書(公開鍵証明書)が第三者として保証するものとして、最も適切なものはどれですか。

  1. ア サイトの運営会社が法令を守っていること
  2. イ 公開鍵と、その持ち主との結びつき
  3. ウ サイトにウイルスが含まれていないこと
  4. エ 通信の内容が改ざんされないことを、認証局が常に監視していること
答えと解説
正解:イ 証明書は、公開鍵が誰のものかを認証局が署名で保証するものです。運営会社の行いの良さ(ア)や、サイトの中身の安全(ウ)は保証しません。認証局が通信を監視すること(エ)もありません。

問2 社員25人の会計事務所(架空)で、サイトのサーバーの秘密鍵が、退職した外注先のパソコンに残っていたと分かりました。証明書の期限はまだ4か月あります。最初に行うこととして、最も適切なものはどれですか。

  1. ア 期限が切れるまで様子を見る
  2. イ 認証局に証明書の失効を申請し、新しい鍵で証明書を再発行する
  3. ウ 証明書の種類をDVからEVに変える
  4. エ サイトのパスワードだけを変更する
答えと解説
正解:イ 秘密鍵が漏れたおそれがあれば、証明書を失効させ、鍵を作り直して再発行します。期限まで待つ(ア)と、その間なりすましに使われるおそれがあります。種類の変更(ウ)やパスワードの変更(エ)では、漏れた鍵は無効になりません。

問3 CRLとOCSPの説明として、最も適切なものはどれですか。

  1. ア CRLは失効した証明書の一覧で、OCSPは証明書ごとに状態を問い合わせる方式である
  2. イ CRLは証明書の発行を申請する手順で、OCSPは証明書を暗号化する方式である
  3. ウ CRLもOCSPも、証明書の有効期間を延ばすための仕組みである
  4. エ OCSPは利用者の閲覧先が認証局に伝わらないため、CRLよりプライバシーに優れる
答えと解説
正解:ア どちらも失効を確かめる方式です。発行の申請(イ)や期限の延長(ウ)とは関係ありません。OCSPは問い合わせで閲覧先が認証局に伝わるため、プライバシーの面ではCRLより不利とされます(エは逆)。

よくある質問

無料の証明書と有料の証明書で、安全性は違いますか?
暗号化の強さは変わりません。違うのは、発行前の確認(DV・OV・EV)と、補償やサポートの有無です。会社案内のサイトなら、自動更新できる無料のDV証明書で十分なことが多いです。
有効期間が47日になったら、47日ごとに作業が必要ですか?
自動更新にしていれば、人の作業は要りません。手作業で更新している場合は、2027年3月の100日への短縮までに、自動更新へ切り替える計画を立てるのが現実的です。レンタルサーバーや制作会社に、対応状況を文面で確かめてください。
社内の機器で出る証明書の警告は、無視してよいですか?
無視する習慣をつけると、本物の偽サイトの警告も見過ごすようになります。機器の管理者に確かめてもらい、可能なら正しい証明書を入れてください。警告が出ない状態を普通にしておくことが、社員教育にもなります。

外からの確認結果を、そのまま報告に使う

Moshiruは、打合せなしでテキストだけでお受けします。許可をいただいた自社サイトを外から見える範囲でスキャンし、証明書の期限や古い暗号方式が残っていないかを含めて、重要度ごとの件数をお返しします。

無料スキャンを申し込む対象のURLと許可だけメニューにないことを頼む文面で合意するまで料金はかかりません

参考にした資料

  1. CA/Browser Forum「Baseline Requirements for the Issuance and Management of Publicly-Trusted TLS Server Certificates」Version 2.3.0(2026年9月)
  2. CA/Browser Forum「Ballot SC-081v3: Introduce Schedule of Reducing Validity and Data Reuse Periods」(2025年4月)
  3. CA/Browser Forum「Ballot SC-063v4: Make OCSP Optional, Require CRLs, and Incentivize Automation」(2023年7月)
  4. Let's Encrypt「OCSP Service Has Reached End of Life」(2025年8月)
  5. Let's Encrypt「Decreasing Certificate Lifetimes to 45 Days」(2025年12月)
  6. Chromium Blog「An update on the lock icon」(2023年5月)
  7. Chromium security-dev「Upcoming Change to Chrome's Identity Indicators」(2019年8月)
  8. IPA「情報セキュリティマネジメント試験 シラバス」Ver.4.1(2025年4月)