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会社のセキュリティ教科書 第10部 10-6

電子署名法・電子帳簿保存法とは|e-文書法との違いと電子契約の注意点

公開:2026年10月15日/最終更新:同/Moshiru 岡﨑 悠太

こんなときに役立ちます

  • 電子契約・請求書の電子保存を始めるとき
  • メールで届いたPDFの請求書を、どこにどう保存すればよいか決めたいとき
  • 支援士やSGの勉強で、電子署名法・e-文書法・電子帳簿保存法の違いを整理したいとき

読み終えたあと、社内でこう言えます

「電子契約と請求書の電子保存に関わる法律を、3つに整理しました」

結論:電子署名法とは、本人による一定の電子署名がある電子文書を、本人の意思で作られたものと推定する法律です。紙の契約書の押印に近い効果を、電子契約に与えます。e-文書法は、法令で紙での保存が求められる書類を電子で保存・作成できるようにする共通ルールです。電子帳簿保存法は税の帳簿や書類の電子保存のルールで、メールやWebで受け取った請求書などは、2024年1月から電子データのまま保存する必要があります。どれも、改ざんされていないことと、後で探せることがセキュリティの要です。

電子署名法は電子文書の成立を推定し、e-文書法は書面保存の電子化を認め、電子帳簿保存法は税の書類の電子保存を定める

電子署名法・e-文書法・電子帳簿保存法の違いは?

3つとも「紙を電子に置き換える」ための法律ですが、守る対象が違います。まず全体を表で並べます。

法律何を決めているか会社の場面
電子署名法(2001年4月施行)電子署名の定義と、電子文書が本人の意思で作られたと推定される条件電子契約サービスで契約書を交わす
e-文書法(2005年4月施行)法令で紙での保存・作成・縦覧・交付が求められる書類を、電子で行ってよいとする共通ルール社内で保存義務のある書類を電子で残す
電子帳簿保存法(1998年7月施行)税の帳簿や書類を電子で保存するときの要件。電子取引データの電子保存の義務PDFの請求書を受け取る・会計ソフトで帳簿をつける

施行日は、e-Gov法令検索の各法律の附則で確認しました。電子署名の技術的な仕組み(ハッシュ値や公開鍵の使い方)はデジタル署名で扱います。この節は、法律の側から見ます。

電子署名法の「真正な成立の推定」とは?

契約書が裁判で証拠になるには、その文書が本人の意思で作られたこと(真正な成立)が前提です。紙の文書では、民事訴訟法第228条4項により、本人の署名か押印があれば真正に成立したと推定されます。電子署名法第3条は、これを電子文書に当てはめた規定です。

比べる点紙の契約書電子契約
推定の根拠民事訴訟法第228条4項電子署名法第3条
必要なもの本人または代理人の署名か押印本人による電子署名。署名に必要な符号や物を適切に管理し、本人だけが行えるもの
守るべきもの印鑑の保管ログインの認証情報、署名の鍵

第2条では、電子署名を次の2つを満たす措置と定めています。

クラウドの電子契約サービス(立会人型)はどう扱われる?

多くの電子契約サービスは、利用者の指示を受けて、サービス事業者自身の鍵で署名します。この型について、総務省・法務省・経済産業省がQ&Aを公表しています(第2条関係は2020年7月17日、第3条関係は2020年9月4日。第3条関係は2024年1月9日にデジタル庁と法務省が一部改定)。

第3条の推定が働くには、本人でなければ署名できない仕組みが十分な水準であること(固有性)が必要とされています。Q&Aでは、次の2つの両方を満たす必要があるとしています。

  1. 利用者とサービスの間:例として、登録済みのメールアドレスとパスワードに加え、SMSやトークンで得たワンタイムパスワードを入れる2要素認証が挙げられています。
  2. サービス事業者の内部:十分な強度の暗号、鍵の適切な管理、操作ログを改ざんできない仕様、監査で運用を確かめることなどが例示されています。

会社が選ぶときは、2要素認証を必須にできるか、相手の身元をどう確かめるかを確認してください。誰の端末から署名されたか分からない状態では、紛争になったときに説明しにくくなります。多要素認証の考え方はパスキーとパスワードレスも参考になります。

e-文書法で何ができる?

正式名称は「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」です。2004年12月に公布され、2005年4月に施行されました。個別の法律が「書面で」と定めている手続を、まとめて電子で行えるようにしています。

できること条文
書面の代わりに、電子データで保存する第3条
書面の代わりに、電子データで作成する第4条
書面の代わりに、電子データで縦覧(閲覧)させる第5条
書面の代わりに、電子データで交付する第6条

対象になる書類と、満たすべき要件は、各省の「主務省令」で決まります。すべての書類が自動的に電子でよくなるわけではありません。税の書類については、電子帳簿保存法が具体的なルールを定めています。

電子帳簿保存法の3つの区分とは?

国税庁は、電子帳簿保存法の制度を3つに分けて説明しています。義務になっているのは1つだけです。

区分中身義務か
電子帳簿等保存会計ソフトなどで最初から電子で作った帳簿や書類を、電子のまま保存する希望者のみ
スキャナ保存紙で受け取った領収書などを、スキャンして電子で保存する希望者のみ
電子取引データ保存メールやWebで受け取った・送った請求書や注文書などを、電子のまま保存する所得税・法人税の保存義務者は義務

電子取引データを紙に印刷して保存すればよいとする「宥恕措置」は、2023年12月31日で終わりました(国税庁、令和5年度税制改正の解説)。2024年1月以降にやり取りしたデータは、電子のまま保存します。

電子取引データの保存ルールは?

国税庁のリーフレット(2024年11月)では、原則のルールを次の3つにまとめています。

  1. 改ざんを防ぐ:タイムスタンプ付きのデータを受け取る、受け取ったデータにタイムスタンプを付ける、訂正・削除の履歴が残るシステムで保存する、事務処理規程を作って運用する、のいずれか。
  2. 見られるようにする:保存データを確認するディスプレイやプリンタを備える。
  3. 探せるようにする:「日付・金額・取引先」で検索できる。さらに範囲指定や組み合わせでの検索か、税務調査でのダウンロードの求めに応じられること。

基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下の事業者などは、ダウンロードの求めに応じられれば、検索のルールは不要です。また、人手不足などの相当の理由があり、ダウンロードと印刷した書面の提示に応じられる場合は、データを保存しておくだけでよいとする猶予措置もあります。

たとえば社員18人の設備工事会社では(架空の例)

仕入先からの請求書が、毎月40通ほどPDFでメールに届きます。専用のシステムは入れず、次のように運用を決めました。

最後の項目は法律の要件ではありませんが、ランサムウェアで消えたら、保存義務を果たせなくなるためです。法律の要件とセキュリティ対策は、ここで重なります。バックアップの取り方はバックアップの手引きを参考にしてください。

チェックシートではこう聞かれる

よくある設問答え方の例
電子契約サービスの利用にあたり、利用者の認証を強化していますか。はい。電子契約サービスは2要素認証を必須にし、署名できるアカウントを役員と管理部長に限っています。
電子取引データを、法令の要件に従って保存していますか。はい。日付・金額・取引先のファイル名で保存し、改ざん防止のための事務処理規程を定めて運用しています。
重要な電子記録の改ざん防止と、バックアップを行っていますか。はい。保存フォルダの削除権限を1名に限り、毎日別の場所にバックアップしています。
電子署名の鍵や証明書を適切に管理していますか。いいえ。現在は担当者任せです。〇月までに管理者と保管方法を規程に定める予定です。

鍵や証明書の管理は鍵管理と暗号化で扱います。回答の書き方はチェックシートの回答の書き方を参考にしてください。

試験ではここが問われる

SG・支援士

  • 電子署名の2要件(第2条):作成者を示せること、改変されていないかを確かめられること。
  • 推定効(第3条):本人による電子署名(本人だけが行えるもの)があれば、電子文書は真正に成立したと推定される。
  • 3法の区別:電子署名法は成立の推定、e-文書法は書面保存等の電子化の共通ルール、電子帳簿保存法は税の帳簿書類の電子保存。
  • 電子取引データは電子のまま:印刷保存の宥恕措置は2023年末で廃止。改ざん防止・見読性・検索の要件がある。
  • タイムスタンプ:ある時刻にそのデータが存在し、その後改ざんされていないことを示す。電子署名とは目的が違う。

確認問題

問1 電子署名法第2条の「電子署名」の要件として、正しい組み合わせはどれですか。

  1. ア 作成者を示せること、かつ、作成時刻を証明できること
  2. イ 作成者を示せること、かつ、改変されていないかを確かめられること
  3. ウ 暗号化されていること、かつ、国の認定を受けていること
  4. エ 改変されていないかを確かめられること、かつ、紙に印刷できること
答えと解説
正解:イ 第2条は、作成者を示すことと、改変の有無を確認できることの2つを要件にしています。アの時刻の証明はタイムスタンプの役割です。ウの国の認定は、認定認証業務の制度で、電子署名の定義の要件ではありません。

問2 社員10人の設計事務所(架空)が、取引先からメールでPDFの請求書を受け取っています。2026年時点の電子帳簿保存法に沿った扱いとして、最も適切なものはどれですか。

  1. ア 印刷して紙で保存すれば、PDFは削除してよい
  2. イ PDFのまま、改ざん防止の措置をとり、日付・金額・取引先で探せるように保存する
  3. ウ 電子帳簿保存法は大企業だけが対象なので、対応は不要である
  4. エ スキャナ保存の届出をすれば、保存は不要になる
答えと解説
正解:イ メールで受け取った請求書は電子取引データで、電子のまま保存する義務があります。アの印刷保存を認める宥恕措置は2023年末で廃止されました。ウのように規模で対象外になることはありません。エのスキャナ保存は紙の書類の制度です。

問3 電子契約サービス(事業者が利用者の指示で署名する型)について、電子署名法第3条の推定が働くために国のQ&Aが重視している点はどれですか。

  1. ア 契約書の文字数が一定以下であること
  2. イ 利用者の印鑑の画像が契約書に貼られていること
  3. ウ 本人でなければ署名できない仕組みが、利用者側と事業者内部の両方で十分な水準にあること
  4. エ サービスが海外のサーバーを使っていないこと
答えと解説
正解:ウ 第3条関係Q&Aは「固有性の要件」として、利用者とサービスの間のプロセスと、事業者内部のプロセスの両方で十分な水準を求めています。イの印影の画像は、それだけでは本人性を示せません。アとエは要件として挙げられていません。

よくある質問

電子契約は、紙の契約書と同じように有効ですか?
多くの契約は、電子でも有効に結べます。契約は原則として合意で成立し、書面を必要としないためです。ただし、法律で書面が求められる契約もあるため、対象の契約ごとに確認し、必要なら弁護士に相談してください。
メールで届いた請求書を印刷して保存するだけではだめですか?
2024年1月以降にやり取りしたものは、印刷だけでは足りません。電子取引データは電子のまま保存する義務があるためです。人手不足などの相当の理由がある場合は、データを保存しておき、求めに応じて提示できれば認められる猶予措置があります。
タイムスタンプのサービスを契約しないといけませんか?
必須ではありません。改ざん防止の措置は、タイムスタンプのほか、訂正・削除の履歴が残るシステムの利用や、事務処理規程の作成と運用でも満たせます。小さな会社では、規程による方法がよく使われます。

この記事のまとめ

電子保存の設問は回答を任せて、確認と提出だけに

Moshiruは、打合せなしでテキストだけでお受けします。取引先から届いたセキュリティチェックシートの、電子契約や電子保存、バックアップに関する設問に、御社の実態に合わせた回答を作ってお返しします。

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参考にした資料

  1. e-Gov法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律」(平成12年法律第102号)
  2. e-Gov法令検索「民事訴訟法」第228条
  3. 総務省・法務省・経済産業省「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」(2020年7月17日)
  4. 総務省・法務省・経済産業省「同Q&A(電子署名法第3条関係)」(2020年9月4日、2024年1月9日デジタル庁・法務省一部改定)
  5. e-Gov法令検索「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(平成16年法律第149号)
  6. e-Gov法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(平成10年法律第25号)
  7. e-Gov法令検索「同法施行規則」第4条
  8. 国税庁「電子取引データを適切に保存できていますか?」(2024年11月)
  9. 国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました(令和5年度税制改正)」
  10. 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」