Moshiru

会社のセキュリティ教科書 第11部 11-3

スタートアップでも起きるセキュリティインシデント|起きやすい7つの形と最初の一手

公開:2026年10月14日/最終更新:2026年10月14日/Moshiru 岡﨑 悠太

この手引きの要点(約25秒・音が出ます)

こんなときに役立ちます

  • 少人数で急成長している会社が、何から守ればいいか知りたいとき

読み終えたあと、社内でこう言えます

「誰でも見られる設定と管理者の多要素認証を、点検して記録しました」

結論:人数の少ない会社で起きやすいのは、高度な攻撃よりも鍵の公開、公開設定のミス、消し忘れたアカウントです。総務省も、クラウドの設定ミスに絞ったガイドブックを出しています。

起きやすい3つ
1鍵の公開
2公開設定のミス
3消し忘れたアカウント

高度な攻撃よりも、こちらが多い

最初の一手は、漏れた鍵は消すより先に作り直す、「誰でも見られる」設定を一覧で探す、管理者に多要素認証を付けるの3つ。大企業との取引が始まると、チェックシートで同じ点を聞かれるので、点検の記録を残しておくと回答にも使えます。

最初の一手
  • 漏れた鍵は消すより先に作り直す
  • 「誰でも見られる」設定を探す
  • 管理者に多要素認証を付ける
起きやすい4つの形
1鍵の公開キーを書いてコミット。まず作り直す
2公開設定開発中に公開のまま。一覧で確かめる
3消し忘れ退職者や委託のアカウントが残っている
4管理者全員が管理者。人数を絞り多要素認証

多くは設定と運用で防げる

起きやすい7つの形

1. APIキーやパスワードをGitHubなどに公開してしまう

なぜ起きるか:設定ファイルにキーを書いたままコミットする、個人のリポジトリに試しに上げる、などです。最初の一手:キーを無効にして作り直します。GitHubの公式ドキュメントも、最初にシークレットを失効・ローテーションするよう書いており、履歴を書き換えて消すだけでは確実とは言えないとしています。

鍵を公開してしまったら

やらない

  • ×履歴を書き換えて消すだけ

やる

  • ○キーを無効にする
  • ○作り直す

公開リポジトリでは、GitHubのシークレットスキャンが無料で動き、プッシュ保護も既定で有効です。非公開のリポジトリでも設定を確かめておきます。

GitHubで確かめる
1シークレットスキャン公開リポジトリは無料
2プッシュ保護既定で有効
3非公開リポジトリ設定を確かめる

2. クラウドの公開設定のミス

なぜ起きるか:総務省「クラウドの設定ミス対策ガイドブック」(2024年4月)は、既定値のまま使った例や、開発中に「公開」へ変えたまま戻さなかった例を挙げています。最初の一手:ストレージやデータベースの公開設定を一覧で確かめ、設定する人と確かめる人を分けます。

公開設定の点検
  • ストレージの公開設定
  • データベースの公開設定
  • 設定する人と確かめる人を分ける

3. SaaSの共有リンクと権限

なぜ起きるか:同じガイドブックには、ファイル共有サービスの公開範囲を誤り、顧客情報が「リンクを知っているインターネット上のすべての人」に見られる状態になった例があります。最初の一手:共有の設定画面で「リンクを知っている全員」になっているファイルを探し、社外に出す必要のないものを社内限定に戻します(画面の名前は変わることがあります)。

共有リンクの見直し
  1. 1探す「リンクを知っている全員」
  2. 2見分ける社外に出す必要があるか
  3. 3戻す社内限定に

4. 退職者・業務委託のアカウントが残る

なぜ起きるか:入れ替わりが早く、契約の終わりとアカウントの削除が結び付いていないためです。ガイドブックも、退職者のアカウントや権限の削除漏れを挙げています。最初の一手:人の一覧とアカウントの一覧を突き合わせます。手順はアカウントの棚卸しにまとめています。

アカウントが残る理由
入れ替わり早い
契約の終わり削除と結び付いていない
その結果アカウントが残る

人とアカウントの一覧を突き合わせる

5. 管理者アカウントの乗っ取り

なぜ起きるか:創業メンバー全員が管理者のまま、パスワードだけでログインしている、などです。ガイドブックは、管理者のIDとパスワードが漏れると乗っ取りや停止が起こりうるとしています。最初の一手:管理者を必要な人数に絞り、多要素認証を付けます。

管理者アカウント

やらない

  • ×全員が管理者のまま
  • ×パスワードだけでログイン

やる

  • ○必要な人数に絞る
  • ○多要素認証を付ける

6. 開発用のデータに本番の個人情報

なぜ起きるか:手早く動作を確かめるため、本番のデータを開発環境に写すためです。開発環境は守りが弱くなりがちです。最初の一手:開発にはダミーのデータを使います。本番の個人データが漏れた場合、不正アクセスによるものや1,000人を超えるものは、個人情報保護委員会への報告の対象です(報告と通知)。

開発用のデータ

やらない

  • ×本番のデータを写す

やる

  • ○ダミーのデータを使う

不正アクセスや1,000人超の漏えいは報告の対象

7. 大企業のセキュリティチェックで止まる

なぜ起きるか:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(組織編)の2位は「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」です。発注する側は委託先の対策を確かめるため、質問票を送ります。最初の一手:上の1〜6を点検し、日付と結果を残します。そのまま回答の裏付けになります。

10大脅威 2026(組織編)
2位委託先などを狙う攻撃サプライチェーンや委託先

1〜6を点検し、日付と結果を残す

今週やる順番

  1. 管理者アカウントを数え、多要素認証を付ける。
  2. リポジトリと設定ファイルにキーが書かれていないか確かめ、見つけたら作り直す。
  3. クラウドのストレージと共有リンクで「誰でも見られる」ものを探す。
  4. 退職者・契約が終わった人のアカウントを止める。
  5. 開発環境に本番の個人データがないか確かめる。
今週やる順番
  1. 1管理者に多要素認証
  2. 2キーを確かめる
  3. 3「誰でも見られる」ものを探す
  4. 4退職者を止める
  5. 5本番データの確認

取引や資金調達の前に聞かれること

大企業と取引を始めるときは、セキュリティチェックシートが届くことがよくあります。聞かれるのは、責任者、アカウントの管理、多要素認証、バックアップ、事故のときの連絡体制などです。答え方はチェックシートの答え方にまとめています。

よく聞かれること
  • 責任者
  • アカウントの管理
  • 多要素認証
  • バックアップ
  • 事故のときの連絡体制

経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室が進める「SCS評価制度」は、取引先の対策の水準を★で示す仕組みで、IPAは2026年度下期の運用開始を想定しています。★3は専門家の確認付きの自己評価です(★3の準備)。手を付けずに残すと何が起きるかは、対策しないことの費用も参考にしてください。

SCS評価制度
★対策の水準★で示す
★3自己評価専門家の確認付き

IPAは2026年度下期の運用開始を想定

よくある質問

社員が数人でも対策は必要ですか?
必要です。ただ、7つの形の多くは設定と運用で防ぐものです。高い製品を入れる前に、まず点検から始められます。
リポジトリを非公開にしていれば、キーを書いても大丈夫ですか?
非公開でも、メンバーの追加や外部サービスとの連携で見える人は増えます。キーは環境変数やシークレットの管理機能に置き、コードには書かない方が安全です。
チェックシートで「できていない」項目はどう書けばいいですか?
実態と違う内容は書かず、「いつまでに整える」と予定を添えて答えます。事実と違う回答は、あとで説明がつかなくなります。

チェックシートの回答づくりは任せて、確認だけに

Moshiruは、大企業から届くセキュリティチェックシートの回答を、打合せなし・テキストのやり取りだけで作ります。自社のサイトの状態を外から確かめたいときは、許可をいただいたサイトだけを調べる無料スキャンから始められます。

チェックシート回答代行20問まで1.5万円(税別)無料スキャンを申し込む対象のURLと許可だけ

参考にした資料

  1. 総務省「クラウドの設定ミス対策ガイドブック」(2024年4月)
  2. 総務省「クラウドの設定ミス対策ガイドブック」の公表(2024年4月26日)
  3. GitHub Docs「リポジトリからの機密データの削除」
  4. GitHub Docs「シークレットスキャンについて」
  5. IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日)
  6. IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」付録7 クラウドサービス安全利用の手引き
  7. 個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」
  8. IPA「SCS評価制度の詳細情報」(2026年5月29日更新)