セキュリティの手引き
セキュリティ対策をしなかった場合の損失|中小企業の被害額・復旧期間・取引への影響
公開:2026年10月14日/最終更新:2026年10月14日/Moshiru 岡﨑 悠太
結論:事故が起きたときの損失は、調査・復旧の費用、止まった間の売上、取引先への補償、個人情報の通知とお詫び、信用の5つに分かれます。警察庁の令和7年の調査では、ランサムウェアの調査・復旧費用は回答89件中46件が1,000万円以上でした。IPAの中小企業調査でも、被害額は平均73万円、最大1億円です。
起きたときの損失の大きさ46件1,000万円以上回答89件中(警察庁)
平均73万円被害額中小企業(IPA)
一方、最初の点検は数万円からできます。自社の数字で並べて、社長に1枚で出すのが近道です。
起きたときの損失1調査・復旧89件中46件が1,000万円以上
2止まった売上1か月以上が107件中22件
3取引先へ補償被害企業の約7割で影響
4通知とお詫びコールセンター3か月で700万円〜
最初の点検は0円から始められる
調査・復旧の費用と、止まった間の売上
調査・復旧の費用
警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年3月)の、ランサムウェア被害に遭った組織へのアンケートです。
| 調査・復旧費用の総額 | 件数(回答89件) |
| 100万円未満 | 16件 |
| 100万〜500万円未満 | 18件 |
| 500万〜1,000万円未満 | 9件 |
| 1,000万〜5,000万円未満 | 32件 |
| 5,000万円以上 | 14件(うち1億円以上5件) |
- 身代金を払っても戻るとは限らない:警察庁は、支払っても復号が保証されるわけではないと説明しています。
- バックアップがあっても戻らないことがある:同じ調査で、バックアップから元に戻せたのは回答99件中20件でした。
戻るとは限らない実際は
- →払っても復号の保証はない
- →戻せたのは99件中20件
- 中小企業全体では:IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策の実態調査」(速報版、2025年2月)では、過去3期の被害額は平均73万円、100万円以上が9.4%、最大1億円でした。
中小企業の過去3期の被害額
止まった間の売上
警察庁の同じ調査では、復旧までの期間は回答107件のうち、1週間未満29件、1週間〜1か月未満31件、1か月以上22件、回答時点で復旧中が25件でした。業務に影響がなかったのは回答117件中11件だけです。IPAの中小企業調査では、復旧までの平均は5.8日でした。
復旧までの期間(回答107件)1週間未満29件
1週間〜1か月未満31件
1か月以上22件
回答時点で復旧中25件
影響がなかったのは117件中11件だけ
売上の損失は「1日の売上(粗利)×止まる日数」で見積もります。JNSAは、売上の減少に加えて、止まっている間も払う固定費も損失に数えるとしています。
止まった間の損失1売上(粗利)の減少1日の粗利×止まる日数
2固定費止まっている間も払う
取引先への補償と、個人情報の通知・お詫び
IPAの同じ調査では、被害を受けた企業の約7割が取引先にも影響したと答えています。内容は、サービスの停止・遅延36.1%、顧客への賠償・取引先への補償32.4%などです。
取引先への影響の中身サービスの停止・遅延36.1%
賠償・補償32.4%
被害企業の約7割が取引先にも影響
個人情報が漏れたときは、通知やお詫びの費用がかかります。JNSA「インシデント損害額調査レポート 第2版」(2024年2月)が示す、中小企業での目安です。
| 項目 | 目安(JNSA) |
| 原因・被害範囲の調査 | 300万〜400万円 |
| お詫びのDM(1万人) | 約130万円 |
| 見舞品(1万人にプリペイドカード) | 650万円 |
| コールセンター(3か月) | 700万〜1,000万円 |
| カード情報1,000件の漏えい | 賠償の試算で約3,110万円 |
JNSAは、合計で中小企業でも数千万円単位、場合によっては数億円単位の損失になりうるとしています。本人への通知と報告の進め方は個人情報が漏れたときの報告と通知にあります。
対策の費用と、起きたときの損失を並べる
| 備え | 対策の費用(税別) | 備えがないときの損失の例 |
| 自社サイトの弱点を機械で見る | 無料スキャン0円 | 不正アクセスは脆弱性を突かれた例が48.0%(IPA) |
| スキャン結果の全件と直し方を受け取る | クイック診断5万円 | 被害額は最大1億円、100万円以上が9.4%(IPA) |
| 退職者・不要なアカウントの整理 | アカウント棚卸し5万円(100人まで) | IDとパスワードを盗まれた例が36.8%(IPA) |
| 取引先の質問に事実で答える | チェックシート回答代行1.5万円〜(20問まで) | 被害企業の約7割で取引先に影響(IPA) |
| 月1回の自動スキャンと差分の連絡 | 見守り 月1万円 | ランサムウェアの調査・復旧費用は89件中46件が1,000万円以上(警察庁) |
どの対策から始めるかは、中小企業の事故ランキングと原因の順番を参考にしてください。診断の料金の考え方は脆弱性診断の費用相場にあります。
社長に出す1枚(ひな形)
件名:何もしなかった場合の想定損失(〇年〇月時点)
■1 止まった間の損失
1日の粗利 〇〇円 × 止まる日数 〇日 = 〇〇円
止まっても払う固定費(家賃・給与など)〇〇円
■2 調査・復旧の費用:〇〇円
(警察庁 令和7年:回答89件中46件が1,000万円以上)
■3 取引先への補償:〇〇円
(止まると影響が出る取引先:〇社)
■4 個人情報の通知・お詫び
対象 〇人 × 〇〇円 + 問い合わせ窓口 〇〇円
■5 臨時の人件費:〇人 × 〇日 × 〇〇円
合計:〇〇円
■今やる対策:〇〇(〇〇円)
■判断してほしいこと:〇月〇日までに実施の可否
ひな形は例です。他社の数字をそのまま写さず、自社の売上や顧客数で埋めてください。分からない所は「確認中」と書けば十分です。
よくある質問
サイバー保険に入っていれば大丈夫ですか?
保険で払われる範囲は契約によって違います。止まった間の売上や取引先への補償が対象か、約款で確かめてください。保険は損失の穴埋めで、止まる日数そのものは減らせません。
平均73万円なら、対策しなくてもいいのでは?
平均の裏で、100万円以上の被害が9.4%、最大1億円の例があります(IPA)。めったに起きないが起きると大きい損失なので、平均ではなく「自社で起きたらいくらか」で見てください。
参考にした資料
- 警察庁サイバー警察局「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年3月)
- IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策の実態調査」速報版(2025年2月)
- IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査報告書」(2025年5月)
- JNSA「インシデント損害額調査レポート 第2版」(2024年2月)