Moshiru

セキュリティの手引き

不正アクセスされた会社が最初の1時間でやること|切り離す・残す・知らせる

公開:2026年10月14日/最終更新:2026年10月14日/Moshiru 岡﨑 悠太

結論:最初の5分は①見たものを記録する ②被害にあった機器をネットワークから切り離す(電源は切らない)③責任者に電話する。残りの1時間で、広がりの確認、ログの確保、パスワードの変更、届け出の準備まで進めます。原因探しと復旧は、そのあとです。

最初の1時間の動き
  1. 最初の5分記録・切り離し・電話電源は切らない
  2. 残りの1時間広がり・ログ・パスワード届け出の準備まで
  3. そのあと原因探しと復旧

最初の5分:記録して、切り離す

知らないログインの通知が来た、取引先から「御社から変なメールが来た」と言われた、ファイルが勝手に書き換わっている。不正アクセスに気づくきっかけは、さまざまです。

どの場合も、まず画面をスマホで撮り、気づいた時刻と、誰がどの機器で何を見たかをメモします。あとの調査と届け出で必ず聞かれます。

最初にメモすること
  • 画面の写真(スマホで撮る)
  • 気づいた時刻
  • どの機器・どのアカウントか
  • 誰が何を見て気づいたか

次に、被害にあった機器をネットワークから切り離します。IPAの手引きは、被害が広がるおそれがあればネットワークを遮断し、ただし電源を切るなどの不用意な操作で記録を消さないようにとしています。

気づいた直後

やらない

  • ×電源を切る
  • ×初期化する
  • ×ファイルを消す

やる

  • ○画面を撮る
  • ○LANを抜く・Wi-Fiを切る
  • ○責任者に電話する

何を「抜く」か:機器ごとの判断表

切り離し方は、機器によって違います。サーバーや外とつながる機器は、作った会社や保守会社に電話で相談しながら止めます。

被害にあったもの最初にやることやらないこと
社員のパソコンLANケーブルを抜く、Wi-Fiを切る電源を切る、初期化する
社内のサーバー・共有フォルダ(NAS)外との通信を止める(保守会社と相談)電源を切る、ファイルを消す
VPN機器・リモートデスクトップ外からの接続を止める(保守会社と相談)設定を消す、ログを消す
メール・クラウドのアカウント管理者がアカウントを止め、パスワードを再設定転送設定を見ずに終わりにする
会社のホームページ公開を止める、制作会社に連絡すぐに上書きして元に戻す

メールの乗っ取りはメールアカウントが乗っ取られたら、ホームページはホームページが改ざんされたらに、続きの手順をまとめています。

切り離し方の分かれ道
サーバーや外とつながる機器?
はい保守会社に電話で相談しながら止める
いいえ(社員のパソコン)LANを抜く。電源は入れたまま

残りの1時間:広げない・消さない・決める

  1. 窓口を1人に決める:社内外への連絡は1人に絞ります。メールが読まれているかもしれないので、連絡は電話やチャットで。
  2. 広がりを見る:ほかのパソコン、共有フォルダ、サーバー、バックアップに同じ症状がないかを見ます。
同じ症状がないか見る場所
1ほかのパソコン
2共有フォルダ
3サーバー
4バックアップ

バックアップは、確かめずに感染した機器につながない

  1. ログを確保する:VPN機器、サーバー、クラウドのログイン記録は、保守会社やサービス会社に「消さずに残してほしい」と伝えます。
  2. パスワードを変える:被害にあった機器ではなく、別の端末から。管理者のパスワードと、外から入れるアカウントを先に変えます。
パスワードを変える順番
  1. 1別の端末を用意被害の機器は使わない
  2. 2管理者を変える一番強い権限から
  3. 3外から入れるものVPN・メール・クラウド
  1. 専門家を決める:何が起きたかを調べる「フォレンジック調査」と、元に戻す「復旧」は、分けて見積もってもらうと判断しやすくなります。サイバー保険に入っていれば、保険会社の窓口にも連絡します。
見積もりは2つに分ける

フォレンジック調査

  • 1何が起きたかを調べる

復旧

  • 2元に戻す

届け出と報告の準備

届け出先は3つあります。最初の1時間で出しきる必要はありません。窓口と期限を確かめて、メモを渡せる形にしておきます。

届け出先は3つ
1警察オンライン窓口・県警
2IPA不正アクセスの届出
3個人情報保護委員会漏えいのおそれがあれば

個人情報保護委員会:不正アクセスなど不正の目的によるおそれがある漏えいは、件数にかかわらず報告の対象です。期限は下の図のとおりで、詳しくは漏えいの報告の手引きにあります。

個人情報保護委員会への報告
3〜5日速報発覚日から
60日確報不正の目的のおそれがある場合

報告するかどうか、取引先にどこまで伝えるかで迷うときは、弁護士に相談してください。社内向けの第一報は、次のひな形を直して使えます。

【第一報】不正アクセスの疑いについて(○月○日 ○時○分時点)

気づいた時刻:○月○日 ○時○分
気づいた人・きっかけ:(例)○○さんが、知らない場所からのログイン通知を受けた
対象:(例)○○さんのパソコン/ファイルサーバー
いまの状態:(例)LANケーブルを抜いた。電源は入れたまま
分かっていないこと:入られた経路、漏れた情報の有無
次の連絡:○時○分(窓口:□□、電話 ○○-○○○○-○○○○)

分かっていないことは「調査中」と書きます。実態と違う内容を、ひな形のまま写さないでください。

よくある質問

電源を切ってしまいました。もう手遅れですか?
手遅れではありません。ディスクやほかの機器、クラウドのログには記録が残っていることがあります。それ以上の操作はせず、そのままの状態で専門家に渡してください。
小さな会社で、保守会社もいません。どこに相談すればいいですか?
技術的な相談は、IPAの情報セキュリティ安心相談窓口が受け付けています。調査や復旧を頼む先がない場合は、下の窓口からご相談ください。

いま起きているなら、まず文字で送ってください

Moshiruの代表は、大手自動車メーカーでセキュリティインシデント対応のチームリーダーを務めてきました。打合せはせず、テキストのやり取りだけで、次にやることを順番に返します。

事故が起きたら相談する24時間受付・30分以内に返信ランサムウェアに感染したら初動7ステップ

参考にした資料

  1. IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 付録:インシデント対応の手引き」
  2. 警察庁「サイバー事案に関する相談窓口」
  3. IPA「コンピュータウイルス・不正アクセスに関する届出について」
  4. 個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」
  5. JPCERT/CC「インシデント対応依頼」