Moshiru

社員向けセキュリティ研修を30分で作る方法|教科書の節を並べるだけの台本

公開:2026年10月16日/最終更新:同/Moshiru 岡﨑 悠太

こんなときに役立ちます

  • 上司から「社員にセキュリティ研修をやって」と言われたが、資料も講師もいないとき
  • 取引先のチェックシートで社員教育の実施を聞かれ、まず1回目を開きたいとき
  • 毎年の研修を、担当が替わっても同じ型で回したいとき

読み終えたあと、社内でこう言えます

「30分の研修を、台本と確認テストつきで用意し、記録の様式も決めました」

結論:30分の社員研修は、教科書の節を3つ選び、決まった時間割に並べるだけで作れます。時間割は導入3分・本題7分×3コマ・報告先2分・確認テスト4分です。話す中身は、各節の「こんなときに」と要点を自社の言葉に直せば足ります。最後に5問のテストを出し、日付・参加者・内容を記録します。

30分の時間割
  1. 0〜3分導入目的と3テーマ
  2. 3〜24分本題3コマ1コマ7分
  3. 24〜26分報告先知らせる先
  4. 26〜30分確認テスト5問・答え合わせ

担当者のあなたにとって、この型で何が楽になるか

研修を任された担当者が困るのは、中身を一から考えることと、「それで足りるのか」を一人で判断することです。この記事の型を使うと、その2つが小さくなります。

困ることこの記事で
何を話せばいいか分からない教科書の節を選んで並べるだけ。話す中身は節に書いてある
資料作りに何日もかかる台本とテストのひな形に、自社の名前と報告先を入れるだけ
「この内容で足りるのか」と聞かれるIPAの公開資料をもとにテーマを選んだと説明できる
やった証拠が残らない記録の項目と、上司への報告文をそのまま使える
来年また同じことで悩む差し替え表で、テーマを入れ替えるだけで次の回が作れる

年間の教育計画や、標的型メール訓練の進め方は、教科書の社員教育と標的型メール訓練にまとめています。この記事は、そのうち「年1回・全員の研修」の1回分を30分で作る手順に絞ります。

教科書7-10との分担

7-10で読む

  • 1年間の教育計画
  • 1標的型メール訓練
  • 1効果の測り方

この記事で作る

  • 230分の台本
  • 2節の選び方
  • 2テストと記録

30分の台本は、この時間割に節を入れるだけ

下の表が全体の型です。「使う教科書の節」の欄を入れ替えれば、毎回の研修が作れます。初めての回は、全員の毎日の行動に関わる3つのテーマを選ぶと進めやすくなります。

時間やること使う教科書の節
0〜3分導入:なぜやるか、今日の3テーマ1-6 攻撃者は誰で、何が目的か
3〜10分コマ1:怪しいメールとリンク2-5 フィッシングとスミッシング
10〜17分コマ2:パスワードと多要素認証7-2 パスワードのルール、3-6 多要素認証
17〜24分コマ3:メール・ファイルの送り方と持ち出し7-7 メール・ファイル送付・持ち出しのルール
24〜26分報告先:怪しいと思ったら、誰にどう知らせるか自社の窓口(9-2 初動を参考に)
26〜30分確認テスト5問と答え合わせ各コマから1〜2問、報告先から1問

1コマ7分の中身は、どの節でも同じ順番で組みます。こうしておくと、テーマを替えても準備の手間が変わりません。

1コマ7分の組み立て
  1. 1場面を話す節の「こんなときに」1分
  2. 2要点を3つ節の本文から3分
  3. 3自社に置き換えうちではこうする2分
  4. 4質問を受ける1分

教科書の各節は、冒頭に「こんなときに役立ちます」があります。そこを読み上げると、社員は自分の仕事の話として聞きやすくなります。要点は3つまでに絞り、節の全部を説明しようとしないことが、30分に収めるこつです。

導入の3分は、次のひな形を読み上げれば足ります。○○の所に、自社の名前と報告先を入れてください。

【導入の話し方(3分)】

今日は30分だけ、仕事中のセキュリティの話をします。
目的は1つです。「怪しいと思ったら、すぐ○○に知らせる」を、
全員ができるようにすることです。

お客様や取引先との仕事を続けるためにも、
全員で同じルールを確かめておきます。

今日のテーマは次の3つです。
1. 怪しいメールとリンク
2. パスワードと多要素認証
3. メール・ファイルの送り方と持ち出し

最後に5問の確認テストをします。成績はつけません。
間違いが多かった所を、次の研修のテーマにします。

前日までに決めておくこと

台本より先に、報告先を1つに決めておきます。研修で「ここに知らせて」と言えないと、2分の報告先のコマが成り立ちません。

前日までに決める3つ
1報告先を1つ人の名前か窓口のアドレス
2節を3つ選ぶ時間割の表に入れる
3テストを用意紙かフォームで5問

テーマを選ぶ目安には、IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日公開)が使えます。組織編の1位はランサム攻撃による被害、3位はAIの利用をめぐるサイバーリスクです。

5位は機密情報を狙った標的型攻撃、7位は内部不正による情報漏えい等、10位はビジネスメール詐欺です。

10大脅威2026 組織編から
1位ランサム攻撃
3位AIの利用のリスク
5位標的型攻撃
7位内部不正
10位ビジネスメール詐欺

一部を抜き出し

上位には、機器の更新や委託先の管理など、会社の仕組みで守る話も入っています。全員の研修では、社員一人ひとりの行動で防げるテーマを選びます。

テーマ使う教科書の節向いている回
振込先の変更を装うメール2-7 ビジネスメール詐欺経理・営業が参加する回
特定の会社を狙うメール2-8 標的型攻撃標的型メール訓練の前の回
ランサムウェア2-2 ランサムウェアと二重脅迫大きな報道があった後の回
生成AIに入れてよい情報7-12 シャドーITと生成AIの社内ルール社員がAIを使い始めた時期
偽の警告画面・なりすまし電話2-9 ソーシャルエンジニアリング全員
持ち出し・内部不正7-11 内部不正を防ぐ異動や退職が多い時期
紛失・画面の放置4-18 物理的な対策外で仕事をする社員が多い会社

迷ったら、「そのテーマで、社員が明日からする行動を1つ言えるか」で決めます。言えないテーマは、全員の研修ではなく、管理職や担当者向けの回に回します。

全員研修に入れるか
社員がする行動を1つ言える?
言える全員研修のコマにする
言えない管理職・担当者向けの回へ

1回の研修で扱うのは3コマまでにします。4つ目を入れると、テストと報告先の時間が削られ、30分に収まりません。

動画やスライドを足すなら、IPAの無料素材を使う

話すだけでは単調になりそうなら、コマの冒頭に短い動画を入れます。IPAの「華麗なる情報セキュリティ対策」(2023年3月15日掲載)は全8話で、映像の一覧では各話約2分とされています。

話テーマ合うコマ
#4不審なメールに注意コマ1
#3パスワードの適切な設定と管理コマ2
#5USBメモリ等の取り扱いの注意コマ3
#7ソフトウェアをインストールする際の注意差し替え(7-12)
#8パソコン等の画面ロック機能の設定差し替え(4-18)

動画を入れたコマは、要点の説明を2分短くします。IPAの映像一覧のページは、YouTubeのIPA Channelで再生すれば社内研修に使えると案内しています。事前の申請は要らないとしています。

動画を使う前に
  • 各作品のページで条件を確かめる
  • IPA Channelで再生する
  • 要点の説明を2分短くする

説明を深めたい回は、10大脅威2026の組織編のプレゼンスライドが使えます。PowerPoint・93ページで、2026年3月31日に公開されました。使い方の条件は、IPAの公開ページで確かめてから使ってください。

IPAの無料素材の大きさ
約2分動画1話全8話
5分ポイント学習1テーマ
93ページ10大脅威スライド組織編

自社のルールがまだ文書になっていない場合は、IPAのガイドラインの付録4が使えます。「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版(2026年3月27日公開)の付録です。

付録4は「情報セキュリティハンドブック(ひな形)」(PowerPoint・17ページ)です。自社向けに書き換えれば、コマの「自社に置き換え」の資料になります。

ひな形を研修に回す
付録4のひな形自社向けに書き換える
研修で使う自社に置き換えの資料
配って残す入社時の説明にも使う

確認テストは5問、成績はつけない

テストは、理解の確認と記録のために行います。人を評価するためではありません。間違いが多かった問題を、次の研修のテーマに回します。

確認テストの使い方

やらない

  • ×点数で人を評価する
  • ×点数を貼り出す
  • ×同じ問題を毎年使う

やる

  • ○その場で答え合わせ
  • ○間違いの多い問を次回に
  • ○問題を毎回入れ替える
  1. 各コマから1〜2問、報告先から1問の、合わせて5問にする。
  2. 3択にし、答えは「自社のルールでどうするか」を選ぶ形にする。
  3. 紙なら最後の4分で配って回収する。フォームならテストの機能で自動採点にする。
  4. 答え合わせはその場で行い、正解の理由を一言ずつ添える。
  5. 欠席した人には、台本とテストを渡して後日受けてもらう。
【確認テスト(5問・3択)初めての回の3テーマ用】
※○○は自社の報告先に替えてください。

問1 仕事のメールのリンクを開いたら、ログイン画面が出て、
   IDとパスワードを求められました。まずどうしますか。
 ア 入力して続ける
 イ 入力せずに閉じ、○○に知らせる
 ウ 同僚に転送して、本物か確かめてもらう

問2 会社のメールのパスワードの決め方で、正しいものは?
 ア 長くし、ほかのサービスと使い回さない
 イ 覚えやすいよう、ほかのサービスと同じにする
 ウ 毎月、最後の数字を1つ変える

問3 お客様の名簿を、社外の人に送ることになりました。
 ア 自分の個人のメールから送る
 イ USBメモリに入れて郵送する
 ウ 会社で決めた方法で、宛先を確かめてから送る

問4 自分はログインしていないのに、多要素認証の確認の
   通知がスマホに届きました。どうしますか。
 ア とりあえず承認する
 イ 承認せず、○○に知らせる
 ウ 通知を消して、そのままにする

問5 怪しいメールの添付ファイルを開いてしまいました。
   最初にすることは?
 ア すぐ○○に知らせる(開いたことも伝える)
 イ 自分で調べて、分かってから知らせる
 ウ 何もなかったことにする

【答え】問1 イ/問2 ア/問3 ウ/問4 イ/問5 ア

問題を作る時間がない回は、IPAの「5分でできる!情報セキュリティポイント学習」も使えます。PDF版で提供され、各テーマの最後に確認テストが付いています。従業員向けコースは4テーマです。

記録を残し、上司への報告を1通で済ませる

研修は、記録を残して初めて「やった」と言えます。取引先のチェックシートで教育を聞かれたときの根拠にもなります。

記録に残す5つ
  • 実施日と時間(30分)
  • 参加者と欠席者
  • 使った教科書の節・教材
  • 確認テストの結果
  • 次回のテーマ

欠席した人が後日受けた日も、同じ表に書き足します。派遣社員や役員も参加者の欄に入れておくと、「全員に実施」と答えるときに迷いません。

件名:社員向けセキュリティ研修の実施報告(○月○日)

○○さん

○月○日に、全員向けのセキュリティ研修(30分)を行いました。
・参加:○名(対象○名。欠席○名は○月○日までに受講予定)
・内容:怪しいメールとリンク/パスワードと多要素認証/
 メール・ファイルの送り方と持ち出し
・確認テスト:5問。間違いが多かったのは問○(○○)でした
・次回:○月に、問○のテーマと「○○」を扱う予定です

記録の表は、共有フォルダの「○○」に保存しています。

チェックシートの教育の設問には、頻度・対象・記録の3つをそろえて答えます。書き方はチェックシートの回答の書き方を参考にしてください。

よくある質問

研修が30分だけで足りますか?
年1回の全員研修の1回分としては、テーマを3つに絞れば収まります。足りない分は、月1回の短い注意喚起で補います。取引先に答えるときは、時間の長さより、頻度・対象・記録をそろえて書くと根拠になります。
講師は外部に頼んだほうがいいですか?
全員向けの研修なら、社内の担当者で回せます。台本どおりに話し、その場で答えられない質問は持ち帰って後日答えれば十分です。外部の講師が向いているのは、システム管理者向けなど、役割に合わせた深い内容を扱う回です。
ウェブ会議でも同じ台本でできますか?
できます。動画は画面共有で流し、確認テストはフォームで出すと集計が楽です。会議の参加者の一覧を保存しておくと、出欠の記録として使えます。

この記事のまとめ

次に読む

  1. 次の場面:取引先に聞かれたセキュリティ教育の記録の残し方と回答例取引先に社員教育の実施を聞かれたとき。回答例3通りと受講記録の表
  2. 同じ場面・BPO・人材委託先のセキュリティを確かめる方法取引先に聞くべき質問20と、チェックシートの作り方(発注側向け)。
  3. 教科書で仕組みから(7-10)社員教育と標的型メール訓練社員教育の年間計画と、標的型メール訓練の進め方・測り方を決める

研修の材料を無料でそろえて、準備を半日で終わらせる

Moshiruは、打合せなしでテキストだけでお受けします。無料の配布キットには「社内セキュリティやりがち点検シート」(24項目)があります。研修の前に、自社の手薄な所を10分で見つけるのに使えます。見つかった所を、台本のコマのテーマにしてください。コマに入れる節は、教科書の目次から選べます。

無料の配布キットやりがち点検シート・24項目セキュリティ教科書の目次台本に入れる節を選ぶ

参考にした資料

  1. IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日公開。組織編のプレゼンスライドは2026年3月31日公開)
  2. IPA「華麗なる情報セキュリティ対策」(2023年3月15日掲載)
  3. IPA「映像コンテンツ一覧」
  4. IPA「5分でできる!情報セキュリティポイント学習」
  5. IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版(2026年3月27日公開)