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経営者向けセキュリティ勉強会の進め方|社長に30分で決めてもらう3つのこと

公開:2026年10月16日/最終更新:同/Moshiru 岡﨑 悠太

こんなときに役立ちます

  • 対策の予算や方針を、担当者の判断で決めてしまっていて不安なとき
  • 取引先のチェックシートで「経営層の関与」や「責任者の任命」を聞かれたとき
  • 社長に時間をもらいたいが、何をどう頼めばいいか分からないとき

読み終えたあと、社内でこう言えます

「社長と30分の勉強会を行い、責任者・投資先・受け入れるリスクを記録に残しました」

結論:経営者向けの勉強会は、社長に知識を教える場ではなく、3つを決めてもらう場です。3つとは、責任者を誰にするか、今年何に投資するか、何を受け入れるかです。30分の時間割は、失うもの7分・取引先と国の制度7分・決める時間10分が中心です。決まったことは様式に書き、社長の名前と日付を入れて残します。

社長に決めてもらう3つ
1責任者を決める誰が、どこまで
2投資する所今年の優先と予算
3受け入れるリスク残す理由と見直し時期

担当者のあなたにとって、社長に決めてもらう意味

兼任の担当者がいちばん困るのは、「どこまでやれば足りるか」を自分で決めてしまうことです。決めた人が担当者なら、事故のときに説明するのも担当者になります。勉強会は、その判断を本来の持ち主に返す場です。

困ることこの記事で
どこまでやるかを一人で決めている受け入れるリスクを、社長の判断として記録できる
社長に時間をもらう頼み方が分からないそのまま送れる依頼の文例がある
何を話せば社長が動くか分からない失うもの・制度・決めることの3部で組める
決まったことが口約束で終わる3つの記録の様式に、署名と日付を入れて残せる
経営層の関与を取引先に示せない記録が、チェックシートの回答の根拠になる

経営とセキュリティをつなぐ仕組みの全体は、セキュリティガバナンスとはの節にあります。この記事は、その最初の30分を開く手順に絞ります。

誰が決めるか

今まで

  • ×担当者が範囲を決める
  • ×予算は頼みにくい
  • ×事故の説明も担当者

勉強会のあと

  • ○社長が範囲を決める
  • ○予算が年の計画に入る
  • ○判断の記録が残る

社長に時間をもらう頼み方

頼むときは「勉強会」より「決めてほしいことが3つある」と書くほうが、時間をもらいやすくなります。時間は30分と区切り、資料は前日に渡すと伝えます。

頼むまでの順番
  1. 13つを書く決めてほしいこと
  2. 230分を頼む候補日を3つ
  3. 3前日に資料A4で3枚まで
  4. 4当日に決める記録に署名

次の文例の○○を埋めれば、メールでもチャットでも送れます。取引先から聞かれていることがあれば、それを最初に書くと急ぐ理由が伝わります。

件名:セキュリティについて30分いただけませんか(決めていただきたいこと3点)

○○社長

セキュリティについて、社長に決めていただきたいことが3つあります。
30分お時間をいただけないでしょうか。

1. セキュリティの責任者を誰にするか
2. 今年度、どこにいくらかけるか
3. 今は手を付けず、受け入れるリスクをどれにするか

きっかけは、○○様(取引先)から○○について質問があったことです。
今は私の判断で進めている所があり、会社として決めておきたいと考えました。

資料はA4で3枚にまとめ、前日にお渡しします。
候補日:○月○日(○)○時/○月○日(○)○時/○月○日(○)○時

○○(担当者名)

断られたときは、3つのうち1つだけでも10分で決めてもらいます。最初は「責任者を決める」がおすすめです。残りの2つは、責任者が決まると頼みやすくなります。

30分の時間割は、知る14分・決める10分

社長の時間は短いので、説明は3分ずつに区切ります。下の表のとおり、前半で「なぜ決めるか」を伝え、後半で決めてもらいます。

時間やること使う教科書の節
0〜3分今日決めてほしい3つ依頼の文例と同じ
3〜10分事故で自社が失うもの1-4 事故が会社の存続をおびやかす理由
10〜17分取引先と国の制度6-6 国のガイドライン、6-7 SCS評価制度
17〜27分3つを決める5-6 残留リスクとリスクの受容
27〜30分記録に署名、次の報告日を決める3つの記録の様式

3〜10分:事故で失うものを、自社の言葉で

IPAの「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」は、2026年6月の版です。この手引きは、事故の被害を直接と間接に分けています。

事故で失うもの

直接の被害

  • 1送金・金銭要求
  • 1調査・復旧の委託費
  • 1謝罪対応・弁護士費用

間接の被害

  • 2関係者への広がり
  • 2信用の低下
  • 2止まった間の機会損失

直接は、不正送金や金銭要求、対応の人件費、調査・復旧の外部委託費、代替品費、謝罪対応費、弁護士費用などです。間接は、関係者への被害の広がり、信用の低下、事業停止による機会損失です。

社長に伝えるときは、一般論より自社の場面に直します。「受注システムが3日止まったら」「主要取引先の図面が漏れたら」のように、1つか2つで十分です。

7分で話すこと
  • 自社で一番困る場面を1つ
  • 直接と間接の被害
  • 調査の数字は1つだけ

被害額や復旧期間の調査の数字と、社長に出す1枚のひな形は、セキュリティ対策をしなかった場合の損失にあります。

10〜17分:取引先と国の制度

国は「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」(SCS評価制度)を進めています。経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室の制度です。2026年3月の制度構築方針では、委託元が委託先に段階(★)を示し、対策を促すことを想定しています。

SCS評価制度の予定
  1. 2026年3月制度構築方針段階と流れを示す
  2. 2026年9月18日料金設定などを公開IPAのサイト
  3. 2026年度下期制度開始を目指す10月〜翌3月

★3は、専門家の確認を受けた自己評価に、経営層の自己適合宣誓を添えて申請する仕組みです。有効期間は1年です。方針は、格付けのための制度ではないとしています。

★3の申請の流れ
  1. 1自己評価会社が記入する
  2. 2専門家が確認確認して署名
  3. 3経営層が宣誓自己適合宣誓
  4. 4登録・公開有効期間1年

方針は、2026年度下期の制度開始を目指すとしています。IPAの制度のサイトは、2026年9月18日に料金設定などを公開しました。準備の中身はSCS評価制度の★3とはにあります。

経営者が読む国のガイドラインは2つあります。社長に伝えるのは、「どちらも経営者の役割を書いている」という1点で足ります。

ガイドライン経営者に求めること
IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版(2026年3月27日公開)認識すべき「3原則」と、実行すべき「重要7項目の取組」
経済産業省・IPA「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0」(2023年3月24日公表)責任者に指示すべき「重要10項目」(指示1〜10)

中小企業向けガイドラインの3原則は、経営者のリーダーシップ、委託先の対策まで考えること、関係者とのコミュニケーションです。重要7項目は次のとおりです。

認識すべき3原則
原則1経営者が率いるリーダーシップで進める
原則2委託先まで考える委託先の対策も
原則3関係者と話す普段から説明できる
  1. 組織全体の対応方針を定める
  2. 予算や人材などを確保する
  3. 必要な対策を検討させて実行を指示する
  4. 対策の適宜の見直しを指示する
  5. 緊急時の対応や復旧の体制を整備する
  6. 委託や外部サービスの責任を明確にする
  7. 最新動向を収集する
勉強会で決める3つと7項目
取組1方針を定める受け入れるリスクも
取組2予算と人材投資する所
取組3対策の指示責任者に任せる

7項目の一部を抜き出し

上の項目名は、原文を短く言い換えています。経営ガイドラインの重要10項目は、責任者を置く大きめの会社向けの書き方です。社長が関心を持ったときに渡せるよう、一覧を資料の最後に付けておきます。

指示項目(原文)
1サイバーセキュリティリスクの認識、組織全体での対応方針の策定
2サイバーセキュリティリスク管理体制の構築
3サイバーセキュリティ対策のための資源(予算、人材等)確保
4サイバーセキュリティリスクの把握とリスク対応に関する計画の策定
5サイバーセキュリティリスクに効果的に対応する仕組みの構築
6PDCAサイクルによるサイバーセキュリティ対策の継続的改善
7インシデント発生時の緊急対応体制の整備
8インシデントによる被害に備えた事業継続・復旧体制の整備
9ビジネスパートナーや委託先等を含めたサプライチェーン全体の状況把握及び対策
10サイバーセキュリティに関する情報の収集、共有及び開示の促進

中小企業向けガイドラインは、経営者の法的な責任にも触れています。対策に最善を尽くさず損害が出た場合、取締役が善管注意義務違反などで損害賠償責任を問われることがある、という説明です。

勉強会では、この話で社長を急がせる必要はありません。「だから記録を残したい」と、記録の理由として伝えるだけで十分です。

記録を残す理由
社長が決める範囲・予算・受け入れ
記録に残す署名と日付
説明できる取引先にも社内にも

当日の資料は、A4で3枚まで

資料はスライドより、前日に読めるA4の紙が向いています。1枚目は決めてほしい3つ、2枚目は失うものと制度、3枚目は記録の様式です。

枚載せること作り方
1枚目決めてほしい3つと、それぞれの案案は担当者が1つずつ書く。空欄で渡さない
2枚目自社で一番困る場面と、取引先・国の動き上の2つの章を、自社の言葉で半分ずつ
3枚目3つの記録の様式次の章のひな形を、そのまま印刷する

案を書かずに「どうしますか」と聞くと、社長は判断の材料がなく、決まらずに終わりがちです。担当者が案を出し、社長が選ぶか直す形にします。

資料の作り方

やらない

  • ×空欄で「どうしますか」
  • ×専門用語のスライド
  • ×対策を全部並べる

やる

  • ○担当者の案を1つ書く
  • ○自社の場面で話す
  • ○優先の3つに絞る

投資の案は、教科書のセキュリティの予算と補助金の節を見て、使える制度と合わせて書くと通りやすくなります。

決めてもらう3つの記録の様式

様式は1枚にまとめ、当日の終わりに社長の名前と日付を入れてもらいます。受け入れるリスクの書き方を詳しく知りたい場合は、残留リスクとリスク受容の文書を参考にしてください。

決めたあとの予定
  1. 当日記録に署名社長の名前と日付
  2. 四半期ごと責任者が報告進み具合と事故
  3. 1年後3つを見直す次の勉強会で
【セキュリティについて経営者が決めたこと】
決めた日:20XX年X月X日 決めた人:代表取締役 ○○ ○○
記録した人:○○(担当者)

1. 責任者
 ・セキュリティの責任者:○○(役職)
 ・担当者:○○  代わり:○○
 ・責任者に任せる範囲:○○(例:○万円までの対策の決定)
 ・社長への報告:○か月に1回(次回:○月○日)

2. 今年度、投資すること(優先の順)
 ①○○(費用の目安:○万円、時期:○月まで)
 ②○○(費用の目安:○万円、時期:○月まで)
 ③○○(費用の目安:○万円、時期:○月まで)

3. 今は手を付けず、受け入れるリスク
 ・リスク:○○
  受け入れる理由:○○
  代わりにすること:○○(例:記録だけ残す、保険で備える)
  見直す時期:○年○月

署名:__________

責任者の決め方と、担当者・外部との分け方は情シスがいない会社のセキュリティ担当の決め方にあります。様式の1を埋める前に読んでおくと、案が作りやすくなります。

経営者向けスキルツリーと確認テストの使い方

経営者向けスキルツリー(tree-executive.html)は、経営者が読む教科書の節を順に並べた地図です。勉強会の資料と一緒に送ると、社長が気になった所を自分で読めます。

ツリーとテストでできること
1ツリー読む節の地図
2確認テストブラウザで受ける
3受講記録印刷して保管

確認テスト(test-executive.html)は、ブラウザで受けられます。問題は教科書の確認問題から出され、結果はどこにも送られません。終わると受講記録を印刷できます。

勉強会のあとの流れ
  1. 1ツリーを送る資料と一緒に
  2. 2テストを受ける勉強会のあと5分
  3. 3記録を印刷様式と一緒に保管
  1. 勉強会の前日、資料と一緒にツリーのURLを送る。読むのは任意と添える。
  2. 勉強会のあとに、テストのURLを送り、受けてもらう。
  3. 受講記録を印刷してもらい、3つの記録の様式と同じ場所に保管する。

役員が複数いる会社では、同じURLを役員全員に送ります。受講記録がそろうと、取引先から経営層の教育を聞かれたときにも答えられます。

保管する3つ
  • 3つの記録の様式(署名入り)
  • 受講記録の印刷
  • 勉強会の資料A4・3枚

上司への報告が必要な場合は、記録の様式の写しを添えれば足ります。チェックシートで経営層の関与を聞かれたときの書き方は、チェックシートの回答の書き方を参考にしてください。

よくある質問

社長が「全部任せる」と言ったらどうしますか?
任せる範囲を様式の1に書いてもらいます。「○万円までの対策は担当者が決めてよい」「受け入れるリスクは社長が決める」と分けます。任されたことと、そうでないことが記録で分かります。
30分で3つ全部決まらなかったら?
決まった分だけを記録し、残りは次回の日付を決めて持ち越します。責任者だけでも決まれば、次の2つは責任者と担当者で案を作り直せます。決まらなかったことも、日付と一緒に記録に残します。
SCS評価制度の★を取るかどうかも、この場で決めますか?
取引先から求められているなら、様式の2の投資の候補として出します。求められていなければ、「制度の開始と取引先の動きを、責任者が四半期ごとに報告する」と決めておく形でも構いません。

この記事のまとめ

次に読む

  1. 次の場面:取引先に聞かれたセキュリティ教育の記録の残し方と回答例取引先に社員教育の実施を聞かれたとき。回答例3通りと受講記録の表
  2. 同じ場面・BPO・人材委託先のセキュリティを確かめる方法取引先に聞くべき質問20と、チェックシートの作り方(発注側向け)。
  3. スキルツリー経営者のスキルツリー範囲を教科書の節で読み、確認テストで確かめる

決めてもらったあとの作業は任せて、判断と確認に集中する

Moshiruは、打合せなしでテキストだけでお受けします。無料の配布キットの「社内セキュリティやりがち点検シート」は、資料の2枚目に書く「自社の手薄な所」を見つけるのに使えます。社長が決めた投資の中に、規程づくりや取引先への回答など、メニューにない作業があれば、そのままご相談ください。

無料の配布キットやりがち点検シートほかメニューにないことを頼む決めた対策の作業を任せる

参考にした資料

  1. IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版(2026年3月27日公開。2026年10月16日確認)
  2. IPA「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」(2026年6月。2026年10月16日確認)
  3. 経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0」(2023年3月24日。2026年10月16日確認)
  4. IPA「サイバーセキュリティ経営ガイドラインVer3.0実践のためのプラクティス集」(重要10項目の項目名。2026年10月16日確認)
  5. 経済産業省・内閣官房国家サイバー統括室「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針」(2026年3月。2026年10月16日確認)
  6. IPA「SCS評価制度」(2026年9月18日更新。2026年10月16日確認)