セキュリティ教育の記録の残し方と回答例|取引先に「社員教育は?」と聞かれたら
公開:2026年10月16日/最終更新:同/Moshiru 岡﨑 悠太
こんなときに役立ちます
- 取引先のチェックシートに「社員教育を実施していますか」とあり、書き方に迷うとき
- 研修はしたが記録が残っておらず、根拠を出せないとき
- SCS評価制度の★3に向けて、教育の記録の様式を決めたいとき
読み終えたあと、社内でこう言えます
「教育の設問の回答を書き、受講記録の様式を決めて保管を始めました」
結論:社員教育の設問には、頻度・対象・内容・記録の4つをそろえて答えます。全員に実施して記録があれば「はい」、一部なら範囲と予定、未実施なら「いいえ」と予定を書きます。どの答えでも、根拠になるのは受講記録です。記録には実施日・対象・参加者・内容・確認テストの結果を残します。
答えにそろえる4つ1頻度入社時と年1回など
2対象役員・派遣社員も含むか
3内容何を教えたか
4記録受講記録の表
担当者のあなたにとって、何が楽になるか
教育の設問で担当者が困るのは、書き方よりも「根拠を出して」と言われたときです。記録の型を先に決めておけば、毎年の回答が表の転記で済みます。
| 困ること | この記事で |
| 「はい」と書いてよいか一人で迷う | 記録の有無で、はい・一部・いいえを決められる |
| 回答の文を毎回考える | 3通りの回答例に、自社の数字を入れるだけ |
| 根拠を求められて答えに詰まる | 受講記録の表を、そのまま見せられる |
| 確認テストを作る時間がない | スキルツリーの確認テストを、記録に使える |
| ★3で何を求められるか調べる | 教育に当たる項目の番号と中身を、表で確かめられる |
研修そのものの作り方は、社員向けセキュリティ研修を30分で作る方法にまとめています。この記事は、研修のあとの「答え方」と「記録」に絞ります。
ほかの手引きとの分担この記事
- 2回答例3通り
- 2記録の項目と様式
- 2★3の教育の項目
「はい・一部・いいえ」の回答例
設問の言い方は取引先ごとに違います。ただ、聞かれているのは「定期的に、全員に、記録を残して」行っているかです。下の例の○○は、自社の数字に替えてください。
| 答え | 書き方の例 |
| はい | 「はい。入社時と年1回、役員・派遣社員を含む全員に研修(30分)を行っています。直近は20XX年X月で、対象○名のうち○名が受講しました。受講記録と確認テストの結果を保管しています。」 |
| 一部 | 「一部実施しています。正社員には年1回研修を行い、記録を保管しています。派遣社員とパート社員は未実施のため、20XX年X月の回から対象に加えます。」 |
| いいえ | 「現在、定期的な研修は行っていません。不審なメールへの注意は、その都度社内チャットで共有しています。20XX年X月に全員向けの研修を行い、以後は年1回実施します。」 |
どれを選ぶか迷ったら、記録があるかで決めます。記録を出せないまま「はい」と書くと、根拠を求められたときに説明できません。
どの答えにするか全員分の受講記録がある?
ある「はい」と頻度・対象を書く
一部だけ「一部」と範囲・予定を書く
ない「いいえ」と始める時期を書く
「一部」や「いいえ」でも、今していることと始める時期を書けば、取引先は状況をつかめます。回答全体の書き方は、チェックシートの回答の書き方を参考にしてください。
書くときに外さない3つ- 頻度は回数と時期で書く
- 役員・派遣社員を含むか書く
- 記録を保管しているか書く
記録に残す5つの項目
記録は、あとから別の人が見ても「いつ・誰に・何を」が分かる形にします。項目は次の5つが基本です。
| 項目 | 書く中身 | 例 |
| 実施日・方法 | 日付と時間、集合・オンライン・eラーニングの別 | 20XX年X月X日、30分、オンライン |
| 対象 | 誰を対象にしたか。役員・派遣社員を含むか | 役員・社員・派遣社員、計○名 |
| 参加者 | 受けた人の名前。欠席者と後日受講の日付 | 名簿は受講記録の表のとおり |
| 内容 | テーマと、使った教材 | 怪しいメールと報告先(教科書2-5) |
| 確認テストの結果 | 受けた人数と、間違いの多かった問 | ○名受験、問3の誤答が多い |
SCS評価制度★3の評価基準No.4-2-2-2は、記録する中身を挙げています。「実施内容、実施方法、実施時期及び受講状況」の4つです。上の5項目は、この4つを含みます。
確認テストの点数は、人の評価ではなく理解の確認に使います。記録に残すのは、受けたかどうかと、間違いの多かった問です。
確認テストの結果の扱い
保管場所は共有フォルダの1か所に決め、年ごとにファイルを分けます。保管する年数は社内で決め、規程に書いておくと迷いません。
受講記録の表のひな形
表計算ソフトに、次の列を作れば足ります。研修1回で1シート、1人1行です。
【セキュリティ教育 受講記録】
研修名:____ 実施日:20XX年X月X日(30分)
方法:集合/オンライン/eラーニング 講師:____
内容:____(使った教材:____)
対象:役員・社員・派遣社員・パート 計○名
No.|氏名|所属|区分|受講日|方法 |確認テスト|備考
1 |__|営業|社員|X/X |集合 |4/5 |
2 |__|総務|派遣|X/XX |後日 |5/5 |欠席→後日受講
3 |__|役員|役員|X/X |集合 |5/5 |
集計:対象○名/受講○名/未受講○名(X月X日までに受講予定)
間違いの多かった問:問○(テーマ:____)→次回のテーマに
記録者:____ 確認者(上司):____
欠席した人は、同じ表の行に後日の受講日を書き足します。全員が受けるまで、その回の表を閉じないのがこつです。
欠席者の追いかけ方- 1表に欠席と書く当日のうちに
- 2台本とテストを渡す受ける期限も伝える
- 3後日受けてもらう
- 4受講日を書き足す同じ行に
上司への報告は、表の集計の行をそのまま使えます。報告文のひな形は、30分研修の手引きの最後にあります。
スキルツリーの確認テストを記録に使う
テストを作る時間がないときは、教科書のスキルツリーにある確認テストが使えます。ブラウザで受けられ、受講記録を印刷できます。
結果はどこにも送られず、受けた人の画面の中だけで採点されます。担当者の手元には集まらないので、印刷した受講記録を出してもらいます。
確認テストでできること
- 対象に合うツリーのテストを選ぶ(下の表)。
- テストのページのアドレスを、研修の最後に全員へ送る。
- 各自が受け、受講記録を印刷かPDFで提出する。
- 担当者が、受講記録の表の「確認テスト」欄を埋める。
- 提出された受講記録を、表と同じフォルダに保管する。
役員も受けておくと、「役員を含む全員」と答えるときの根拠になります。結果を社外に送らない作りなので、社員の名前や点数を社外のサービスに預けずに済みます。
テストが回答の根拠になる各自が受けるブラウザで確認テスト
記録を出す印刷かPDFで提出
表に転記取引先への回答の根拠
SCS評価制度★3で、教育に当たる項目
SCS評価制度は、取引先に対策の段階を示すための国の制度です。IPAが★3・★4の要求事項と評価基準を公開しています。
★3の要求事項は26件です。教育に当たるのは「No.4-2-2 セキュリティインシデント発生時の教育・訓練」で、評価基準は次の3つです。
| 評価基準 | 求められていること(要約) | この記事で |
| No.4-2-2-1 | 役員・従業員・派遣社員・受入出向者に、新規受入れ時と年1回以上、インシデント発生時の対応を教育・訓練する。資料の配布・掲示に加え、eラーニングか集合教育で行う | 回答例、確認テスト |
| No.4-2-2-2 | 実施内容・実施方法・実施時期・受講状況を記録し、保管する | 記録の5項目、受講記録の表 |
| No.4-2-2-3 | 年1回以上、教育・訓練の実施内容を点検する | 間違いの多い問を次回に回す |
気をつけたいのは、★3の教育のテーマが「インシデント発生時の対応」である点です。怪しいと思ったら誰にどう知らせるかを、必ず内容に入れます。
★3の教育の基準26件★3の要求事項教育はNo.4-2-2
年1回以上教育の頻度新規受入れ時も
4つ記録する中身内容・方法・時期・受講状況
報告先の教え方は、社員がセキュリティ事故を報告しやすい会社の作り方が使えます。30分研修の「報告先」のコマも、そのまま★3の教育の中身になります。
★4では、これに「No.4-2-1 セキュリティの意識向上のための教育・研修」が加わります。メールやWeb閲覧によるマルウェア感染の予防、機密区分の扱いなどを、年1回以上教えて記録します。
★3と★4の教育の項目★3No.4-2-2インシデント時の対応
★4No.4-2-1も意識向上の教育・研修
★4は★3の項目も含む
★3には、ルールを役員・従業員などに「周知」する評価基準もあります。例はNo.1-3-1-3、No.4-1-5-5、No.4-1-6-3です。研修で方針やパスワードのルールを伝えたら、内容の欄にそう書いておくと、周知の記録を兼ねられます。
研修の記録で兼ねられるもの- インシデント時の教育 No.4-2-2
- 方針の周知 No.1-3-1-3
- パスワードのルールの周知
要求事項と評価基準は、今後定期的に見直すとされています。この記事の番号は、2026年10月16日にIPAの公開資料で確かめたものです。★3の全体はSCS評価制度の★3とはにまとめています。
よくある質問
研修をしたのは1年以上前で、記録もありません。「はい」と書けますか?
記録を出せないなら、「一部」か「いいえ」にして、前回の時期と次回の予定を書くのが無難です。次の研修から受講記録の表をつければ、翌年からは根拠を添えて「はい」と書けます。
動画を見てもらうだけでも、教育に入りますか?
入ります。ただ★3の評価基準では、資料の配布・掲示に加えて、eラーニングか集合教育で行うとされています。動画を使うなら、誰がいつ見たかを記録し、確認テストを添えると、受講状況を示しやすくなります。
受講記録は何年分残せばいいですか?
★3の評価基準には、保管年数の定めはありません。社内規程で年数を決めて書いておきます。★3は1年ごとに更新するので、前の年と比べられるよう、複数年分を残しておくと説明が楽です。
この記事のまとめ
- 教育の設問には、頻度・対象・内容・記録の4つで答える。「はい・一部・いいえ」は記録の有無で決める。
- 記録は実施日・方法、対象、参加者、内容、確認テストの結果の5項目。研修1回で1シート、1人1行の表にする。
- SCS評価制度★3の教育の項目はNo.4-2-2。インシデント発生時の対応を、入社時と年1回以上教え、記録と点検をする。
参考にした資料
- IPA「SCS評価制度 要求事項・評価基準」(★3・★4 要求事項・評価基準。ページ更新日2026年4月21日、2026年10月16日確認)
- 経済産業省ほか「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針」(2026年3月27日)
- IPA「SCS評価制度の詳細情報」(2026年5月29日更新)