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管理職向けセキュリティ研修の作り方|部長・課長に60分で伝える時間割と配る物

公開:2026年10月16日/最終更新:同/Moshiru 岡﨑 悠太

こんなときに役立ちます

  • 「部長・課長にもセキュリティ研修を」と言われたが、社員向けと何を変えればいいか分からないとき
  • 取引先のチェックシートで、役割に応じた教育を実施しているかを聞かれたとき
  • 部下の報告が管理職のところで止まり、担当者に届くのが遅いと感じているとき

読み終えたあと、社内でこう言えます

「管理職向けの60分研修を、時間割と確認テスト、記録の様式まで用意しました」

結論:管理職向け研修は、管理職にしかできない4つの動きを、60分で練習する場です。4つとは、報告を受けたときの動き、部署のルールを守らせること、委託先・取引先の窓口、事故の日の判断です。1テーマ12分の時間割に、教科書の節と短い練習を入れれば作れます。最後に確認テストを受けてもらい、受講記録を残します。

60分の時間割
  1. 0〜5分導入管理職に頼む理由
  2. 5〜53分本題4テーマ1テーマ12分
  3. 53〜60分確認テスト受講記録を残す

担当者のあなたにとって、管理職研修で何が変わるか

社員向けの研修だけでは、報告が部長の机で止まったり、委託先とのやり取りが部署任せになったりします。管理職研修は、担当者が一人で背負っている場面を、管理職と分け合うための場です。

困ることこの記事で
報告が管理職のところで止まる「責めない・すぐ上げる」を、管理職の約束として決められる
目上の人に教える内容が分からない4テーマの時間割と、話す節が決まっている
部署ごとにルールの守り方がばらばら管理職が月1回見る点を、部署で同じにできる
受講したか確かめる手段がない確認テストと受講記録の印刷で、証拠が残る
やったことが上司に伝わらない実施報告のひな形を、そのまま出せる

社員全員向けの30分研修の作り方は、社員向けセキュリティ研修を30分で作る方法にまとめています。この記事は、その管理職版です。

社員研修との違い

社員向け

  • 1自分が気づいて知らせる
  • 1怪しいメールなど行動
  • 1全員・30分

管理職向け

  • 2受けて、上げて、守らせる
  • 2報告・ルール・窓口・判断
  • 2部長・課長・60分

管理職に頼むのは、受けて・上げて・守らせる役

IPAの「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」(2026年6月)は、流れをこう書いています。兆候を見つけたら情報セキュリティ責任者に報告します。責任者は、対応すべきと判断したら速やかに経営者に報告します。

報告が届く道
  1. 1見つけた人兆候に気づく
  2. 2責任者へ報告情報セキュリティ責任者
  3. 3経営者へ報告対応すべきと判断したら
  4. 4体制を作る経営者が役割を決める

この道のどこにも「管理職が預かる」段はありません。管理職は、部下から聞いた話を止めずに、決めた受け手へ渡す役です。研修のいちばんの目的は、ここをそろえることです。

もう1つは、部署の中でルールを守らせることと、委託先とのやり取りです。この2つは、担当者が部署の外から見ても分かりません。管理職にしか見えない所です。

管理職の4つの役
1報告を受ける責めずに、すぐ上げる
2ルールを守らせる部署で月1回見る
3窓口になる委託先・取引先
4事故の日に判断止める・知らせる

60分の時間割は、4テーマ×12分

下の表が全体の型です。1テーマ12分は「場面を話す3分・要点5分・練習4分」で組みます。60分が取れない会社は、30分×2回に分けても構いません。

時間やること使う教科書の節
0〜5分導入:管理職に頼みたい4つの役情シスがいない会社の担当の決め方
5〜17分テーマ1:部下から報告を受けたとき9-2 初動、報告しやすい会社の作り方
17〜29分テーマ2:部署のルールを守らせる6-2 会社に必要な規程、7-11 内部不正を防ぐ
29〜41分テーマ3:委託先・取引先の窓口8-1 委託先を選ぶ前の調査、8-5 サプライチェーンリスク
41〜53分テーマ4:事故の日に判断すること9-7 小さな会社の体制、9-9 BCP
53〜60分確認テストと受講記録管理職向け確認テスト

30分×2回に分けるときは、次のように割ります。2回目の冒頭で、1回目のテーマ1をもう一度30秒で確かめると、つながりが切れません。

30分×2回の割り方

1回目

  • 1導入3分
  • 1テーマ1・2を12分ずつ
  • 1テスト3分

2回目

  • 2前回の確認3分
  • 2テーマ3・4を12分ずつ
  • 2テスト3分

テーマ1:報告を受けたときは、責めない・すぐ上げる

練習は2人1組の役割演技にします。部下役が「添付を開いたら画面が変です」と言い、管理職役が最初のひと言を返します。言ってはいけない言葉と、言う言葉を先に示します。

最初のひと言

言わない

  • ×なんで開いたの
  • ×少し様子を見よう
  • ×自分で調べておいて

言う

  • ○知らせてくれてありがとう
  • ○触らずにそのままで
  • ○今すぐ受け手に電話する

管理職が自分で調べたり、様子を見たりすると、その分だけ受け手への連絡が遅れます。部下が管理職を飛ばして受け手に直接知らせても、それで正しいと伝えます。

受け手の決め方や、社長の名前で出す「責めない約束」の文例は、社員がセキュリティ事故を報告しやすい会社の作り方にあります。研修の前に、受け手を1人決めておいてください。

報告を受けたら
  1. 1お礼を言う責める言葉は使わない
  2. 23つを聞くいつ・何が・今どうか
  3. 3受け手に電話その場ですぐ
  4. 4指示を待つ自分で調べない

テーマ2:部署のルールを守らせる

管理職に、規程を全部覚えてもらう必要はありません。部署で月に1回、決めた点を見てもらいます。見る点は、自社の規程から3〜5個を担当者が選んで渡します。

部署で月1回見る点の例
  • 机に書類が出しっぱなしでない
  • 異動・退職者のアカウントを伝えた
  • 許可のないクラウドを使っていない
  • 持ち出しの記録がある

守られていないのを見つけたら、まず「なぜ守れないか」を聞きます。手順が面倒で守れないなら、担当者に知らせて手順の方を直します。ルールを破った人を探す場ではないと、研修で伝えます。

わざと情報を持ち出すような行為は、別の扱いです。その考え方は内部不正を防ぐの節に任せ、研修では「見つけたら担当者に知らせる」までを決めます。

守られていないとき
手順が面倒で守れない?
はい担当者と手順を直す
わざとに見える担当者に知らせる

テーマ3:委託先・取引先の窓口としての役割

IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版は、2026年3月27日に公開されました。経営者が認識すべき原則の2つ目は、委託先の対策まで考えることです。

委託先に渡した情報が漏れたとき、それが委託先の不備でも、委託元として管理責任を問われる、とあります。委託先と日々やり取りしているのは、多くの場合、各部署の管理職です。

委託先の事故でも
情報を渡す部署が委託先へ
委託先で漏えい委託先の不備でも
委託元の責任管理責任を問われる

研修では、管理職が窓口として必ずすることを3つに絞ります。委託先を選ぶときの確認項目そのものは、委託先を選ぶ前の調査に任せます。

  1. 新しい委託先に情報を渡す前に、担当者に知らせる。
  2. 取引先からチェックシートや質問が届いたら、自分で答えずに担当者へ回す。
  3. 委託先から事故の連絡があったら、テーマ1と同じく、すぐ受け手に上げる。
窓口が回す先
1新しい委託先渡す前に担当者へ
2取引先の質問自分で答えず担当者へ
3委託先の事故すぐ受け手へ

テーマ4:事故の日に管理職が判断すること

練習は、紙の上で事故を進める机上演習にします。「金曜17時、部下のパソコンに脅迫文が出た」という場面を配り、管理職が決めることを書いてもらいます。

同じ手引きは、経営者が体制を立ち上げ、責任者と担当者を定めて役割を明確にする、としています。管理職が決めるのは、会社の判断ではなく、自分の部署の動きです。

事故の日の分担

管理職が決める

  • 1部署の仕事をどう回すか
  • 1部下への指示と連絡
  • 1取引先への一次連絡の準備

経営者・責任者が決める

  • 2対応の体制と役割
  • 2社外への公表
  • 2警察や国への届出

取引先への説明や公表の文面は、管理職が独自に出さないことも、ここで決めておきます。止まってはいけない業務の考え方は事業継続計画(BCP)とBIAの節で扱っています。

配る物は4つ。前日までにそろえる

管理職は忙しいので、研修の資料は少ないほど読まれます。当日に配る物は、次の4つで足ります。受け手の名前と電話番号は、すべての紙に同じものを書きます。

配る物中身使う場面
時間割と受け手の連絡先上の表と、受け手・代わりの電話番号導入
最初のひと言カード言わない言葉・言う言葉と、聞く3つテーマ1
部署で月1回見る点自社の規程から選んだ3〜5個テーマ2
机上演習の場面の紙事故の場面と、決めることの欄テーマ4

机に置ける形にしたいなら、初動ガイドの初動カードが使えます。見つけた人の動きを5つにまとめたカードで、テーマ1の配る物と組み合わせられます。

前日までにすること
  • 受け手と代わりを決める
  • 部署で見る点を選ぶ
  • テストのURLを送る準備
  • 机上演習の場面を書く

スキルツリーと確認テストを、研修の道具にする

管理職向けスキルツリー(tree-manager.html)は、管理職が読む教科書の節を、順番に並べた地図です。研修の前に配っておくと、当日の話の位置づけが伝わります。

確認テスト(test-manager.html)は、ブラウザで受けられます。問題は教科書の確認問題から出され、結果はどこにも送られません。終わったら受講記録を印刷できます。

ツリーとテストの使い方
  1. 1ツリーを送る研修の3日前に
  2. 2研修をする60分か30分×2回
  3. 3テストを受ける最後の7分で
  4. 4記録を集める印刷して保管
  1. 研修の3日前に、ツリーのURLを管理職に送る。読むのは任意と伝える。
  2. 当日の最後の7分で、各自のパソコンかスマホでテストを受けてもらう。
  3. 終わった人から受講記録を印刷し、名前を書いて担当者に出してもらう。
  4. 欠席した人には、ツリーとテストのURLを送り、期限を決めて受けてもらう。
テストの扱い

やらない

  • ×点数で管理職を比べる
  • ×点数を人事評価に使う
  • ×受けたか口頭で聞くだけ

やる

  • ○受講記録を集める
  • ○迷った問題を次回の題に
  • ○欠席者は期限つきで受講

結果は送られないので、点数を集めて比べることはできません。それで構いません。テストは、受けた事実と、迷った問題を本人が知るために使います。

実施の記録と、上司への報告を1通で済ませる

研修は、記録が残って初めて「役割に応じた教育をした」と言えます。取引先のチェックシートで教育を聞かれたときも、この記録が根拠になります。

記録に残す5つ
  • 実施日と時間
  • 参加した管理職と欠席者
  • 扱った4テーマと節
  • 受講記録の印刷
  • 決めた受け手の名前

報告は、次のひな形に数字を入れるだけで出せます。研修で決まったこと(受け手、部署で見る点)を書いておくと、上司は何が変わったかが分かります。

件名:管理職向けセキュリティ研修の実施報告(○月○日)

○○さん

○月○日に、部長・課長向けのセキュリティ研修(60分)を行いました。
・参加:○名(対象○名。欠席○名は○月○日までにテスト受講予定)
・内容:報告を受けたときの動き/部署のルール/
 委託先・取引先の窓口/事故の日の判断
・確認テスト:参加者全員が受講し、受講記録を回収しました
・決まったこと:
 - 部下から報告を受けたら、責めずにすぐ○○(受け手)へ電話する
 - 各部署で月1回、次の○点を見る(○○、○○、○○)
 - 取引先からの質問は、管理職が答えずに担当者へ回す
・次回:○月に、机上演習で迷った「○○」を扱う予定です

記録は、共有フォルダの「○○」に保存しています。

チェックシートの教育の設問には、対象・頻度・記録の3つをそろえて答えます。書き方はチェックシートの回答の書き方を参考にしてください。

よくある質問

部長より若い担当者が講師をしても大丈夫ですか?
大丈夫です。研修の前に、社長か役員から「担当者に頼んで開く」と一言出してもらうと、場が整います。担当者は教える役ではなく、会社で決めたことを伝える役だと最初に言うと、話しやすくなります。
管理職が数人しかいない会社でも必要ですか?
人数が少なくても、報告の受け手と事故の日の分担は決めておく必要があります。2〜3人なら、60分の研修を会議の場で行い、決めたことを記録に残すだけでも十分です。
確認テストの点が低かった管理職はどうしますか?
点数は集まらない作りなので、本人が迷った問題を、次の研修の題材にしてもらいます。評価には使いません。受講記録の印刷が出ていれば、教育を受けた記録としては足ります。

この記事のまとめ

次に読む

  1. 次の場面:取引先に聞かれたセキュリティ教育の記録の残し方と回答例取引先に社員教育の実施を聞かれたとき。回答例3通りと受講記録の表
  2. 同じ場面・BPO・人材委託先のセキュリティを確かめる方法取引先に聞くべき質問20と、チェックシートの作り方(発注側向け)。
  3. スキルツリー管理職のスキルツリー範囲を教科書の節で読み、確認テストで確かめる

管理職研修の材料をそろえて、窓口の仕事を一人で抱えない

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参考にした資料

  1. IPA「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」(2026年6月。2026年10月16日確認)
  2. IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版(2026年3月27日公開。2026年10月16日確認)