Moshiru

会社のセキュリティ教科書 第4部 4-3

無線LANのセキュリティ|WPA2・WPA3と社内Wi-Fiの分け方

公開:2026年10月15日/最終更新:同/Moshiru 岡﨑 悠太

こんなときに役立ちます

  • 社内Wi-Fiの設定を見直すとき/来客用Wi-Fiを用意するとき
  • Wi-Fiルーターを買い替えるときに、何を選べばよいか知りたいとき
  • 取引先のチェックシートで、無線LANの設問に答えるとき

読み終えたあと、社内でこう言えます

「社内Wi-Fiと来客用を分け、暗号化方式も確認済みです」

結論:社内Wi-Fiは、暗号化方式をWPA2かWPA3にすることが出発点です。WEPは解読法が知られているため使いません。来客用Wi-Fiは業務用のネットワークと分け、利用者どうしの通信を遮断します。あわせて、管理画面のパスワード変更、ファームウェアの更新、サポート期限の確認を行います。総務省の手引き(2025年2月版)も同じ考え方です。

社内Wi-FiはWPA2かWPA3で暗号化し、来客用Wi-Fiは業務用と分けて利用者どうしの通信を遮断する

無線LANで起きること

無線LAN(Wi-Fi)は電波で通信するため、壁の外や隣の部屋にも届きます。ケーブルを差さなくても、電波が届く範囲なら誰でも近づけます。設定が甘いと、次のようなことが起きます。

起きること中身
盗み見暗号化が弱いと、通信の中身を読み取られる。
ただ乗り部外者が勝手につなぎ、犯罪の書き込みなどに悪用される。記録上は御社の回線から出たことになる。
社内への侵入つないだ機器から、社内のファイルサーバーや複合機に届いてしまう。
偽のアクセスポイント本物そっくりの名前(SSID)の電波を出し、社員をつながせる。
機器そのものの乗っ取り初期パスワードのままの管理画面や、古いファームウェアの弱点を突かれる。

IPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」にも、無線LANの暗号化方式を適切に設定しているかを問う項目があります。小さな会社でも、最初に確かめたい対策の1つです。

WEP・WPA2・WPA3の違い

Wi-Fiの暗号化方式には世代があります。ルーターの設定画面で「セキュリティ」や「暗号化」の欄に表示されます。

方式今の扱い
WEP解読法が知られている。使わない。
WPA(初代)WEPの弱点を補った方式。一部に脆弱性があり、今は選ばない。
WPA2今も広く使われる基準。最低限ここ以上にする。
WPA32018年6月に登場した新しい方式。対応機器なら有効にする。

WPA3は、Wi-Fiの業界団体Wi-Fi Allianceが2018年6月に発表しました。WPA3のパスワード方式は、SAEという鍵の決め方を使います。これにより、第三者がパスワードを推測する攻撃に強くなりました。また、通信を管理するための信号も保護します(PMF)。

WPA2を使う場合、暗号の種類で「TKIP」と「AES」を選べるなら「AES」を選びます。TKIPには脆弱性が見つかっています。また、1台のルーターが複数のSSIDを出していることがあります。使っていないSSIDに古い方式が残っていれば止めます。

パーソナルとエンタープライズ:鍵を共有するか、人ごとに分けるか

WPA2とWPA3には、それぞれ2つの使い方があります。違いは「つなぐときに何で確かめるか」です。

種類確かめ方向いている会社
パーソナル(PSK)全員が同じパスワード(事前共有鍵)を入れる。社員が少なく、出入りも少ない会社。
エンタープライズIEEE 802.1Xで、人や端末ごとのIDで認証する。社員が多い、退職者が多い、端末を管理したい会社。

パーソナルは手軽ですが、退職者もパスワードを知ったままになります。退職者が出たらパスワードを変える運用が必要です。エンタープライズは認証用のサーバーが必要ですが、1人分だけ止められます。端末とアクセスポイントが互いに確かめ合うため、偽のアクセスポイントにもつながりにくくなります。人ごとの認証の仕組みはネットワークを分けて守るの節でも扱います。

社内Wi-Fiの設定を見直す7項目

総務省の手引きとIPAのガイドラインをもとに、中小企業で見直したい項目をまとめます。ルーターの管理画面と、機器の箱やメーカーの案内を手元に置いて確かめます。

  1. 暗号化方式:WPA2かWPA3になっているか。WEPのSSIDが残っていないか。
  2. Wi-Fiのパスワード:初期値のまま、または短く推測しやすいものになっていないか。
  3. 管理画面のパスワード:初期値から変えているか。Wi-Fiのパスワードとは別物です。
  4. ファームウェア:最新か。自動更新の機能があれば有効にしているか。
  5. サポート期限:メーカーの更新が終わった機器を使い続けていないか。
  6. 使わない機能:外部からの管理画面の接続やUPnPなど、使わない機能を止めているか。
  7. パスワードを知る人:壁に貼っていないか。退職者が出たときに変えているか。

Wi-Fiルーターも、インターネットにつながる機器の1つです。古い機器の扱いはIoT機器のセキュリティの節も参考にしてください。

来客用Wi-Fiは業務用と分ける

来客にWi-Fiを貸すとき、社員と同じネットワークに入れてはいけません。来客の端末がウイルスに感染していれば、社内の機器に届いてしまうからです。総務省の提供者向けの手引きも、業務用のネットワークを来客用に使わず、分けるよう求めています。

設定やること
ネットワークを分ける来客用のSSIDを別に作り、社内LANに届かないようにする。ルーターの「ゲスト機能」や、VLAN(スイッチで仮想的に分ける仕組み)を使う。
利用者どうしを遮断来客の端末どうしが通信できない機能を有効にする。プライバシーセパレータ、クライアントアイソレーションなどと呼ばれる。
パスワードの扱い誰でも見られる場所に貼らない。必要な人に渡し、定期的に変える。
暗号化来客用もWPA2かWPA3で暗号化する。対応機器ならWPA3を有効にする。

たとえば社員25人の会計事務所では(架空の例)

社員25人の会計事務所で、Wi-Fiが1つだけあるとします。社員も来客も同じSSIDにつなぎ、パスワードは応接室に貼ってあります。同じネットワークには、顧客の帳簿データを置いたファイルサーバーがあります。

この状態では、来客の端末からファイルサーバーが見えてしまうおそれがあります。見直しは次の順番です。まず業務用と来客用のSSIDを分け、来客用はゲスト機能で社内LANから切り離します。次に業務用のパスワードを変え、貼り紙をはがします。最後に、来客用のパスワードを月ごとに変える運用を決めます。ルーターがゲスト機能に対応していなければ、買い替えの時期です。

外出先のWi-Fiを使う社員へ伝えること

カフェや駅の公衆Wi-Fiは、会社が設定を決められません。社員には、次の3点を伝えておきます。総務省の利用者向けマニュアル(2025年2月版)とIPAの自社診断の内容に沿っています。

HTTPSの仕組みはTLS・HTTPS・SSHの節で、VPN機器の点検はVPN機器の点検の記事で説明しています。スマホのテザリングも、使わないときは切っておきます。

チェックシートではこう聞かれる

よくある設問答え方の例
社内の無線LANは安全な暗号化方式を使っていますか。はい。すべてのアクセスポイントでWPA2以上を使い、WEPは無効にしています。
来客用の無線LANは、業務用ネットワークと分離していますか。はい。来客用SSIDはゲスト機能で社内LANから分け、利用者どうしの通信も遮断しています。
無線LANのパスワードは定期的に、または退職時に変更していますか。いいえ。現在は変更の決まりがなく、〇月から退職者が出たときに変更する手順にします。
無線LAN機器のファームウェアを更新していますか。はい。自動更新を有効にし、半年に1回、管理画面で版とサポート期限を確認しています。

設問の言い回しは取引先によって違います。迷ったらチェックシートの回答の書き方も参考にしてください。

試験ではここが問われる

SG・SPREAD・支援士・Security+ 3・CISSP 4

  • 方式の世代:WEPは短時間で解読される。WPA2ではTKIPでなくAESを選ぶ。WPA3はSAEでパスワード推測に強く、PMFが必須。
  • PSKとエンタープライズ:PSKは全員が同じ鍵。エンタープライズはIEEE 802.1XとRADIUSなどで利用者ごとに認証します。
  • Enhanced Open:パスワードなしの公衆Wi-Fiでも通信を暗号化する仕組み。認証はしない点に注意します。
  • KRACKs:WPA2で見つかった脆弱性。各メーカーが配布したファームウェアに更新すれば対処できます。WPA3では解消されています。
  • 分離の機能:来客用の分離(ゲストネットワーク、VLAN)と、端末どうしの遮断(プライバシーセパレータ)は別の機能です。

確認問題

問1 WPA3のパスワード方式(パーソナル)が、WPA2より強くなった点として最も適切なものはどれですか。

  1. ア SSIDが周りから見えなくなった
  2. イ SAEという鍵の決め方で、パスワードの推測に強くなった
  3. ウ パスワードが不要になった
  4. エ 来客用ネットワークが自動で分離されるようになった
答えと解説
正解:イ WPA3はSAEを使い、第三者によるパスワードの推測に強くなりました。SSIDは見えたままで、パスワードも必要です。来客用の分離は別の設定で行います。

問2 社員40人の物流会社(架空)で、社員が全員同じWi-Fiパスワードを使っています。毎月のように退職者が出ます。最も効果的な見直しはどれですか。

  1. ア SSIDを非表示にする
  2. イ パスワードを長くして、その後は変えない
  3. ウ 利用者ごとのIDで認証するエンタープライズ方式に移る
  4. エ 暗号化方式をWEPに戻して、古い端末もつなげるようにする
答えと解説
正解:ウ 人ごとに認証すれば、退職者の分だけ止められます。アは見つけにくくするだけで対策になりません。イでは退職者が使い続けられ、エは安全性を下げます。

問3 来客用Wi-Fiで「プライバシーセパレータ」を有効にすると、何が防げますか。

  1. ア 来客用Wi-Fiにつないだ端末どうしの通信
  2. イ インターネットからの攻撃のすべて
  3. ウ 電波が建物の外に漏れること
  4. エ 社員による業務用Wi-Fiの使用
答えと解説
正解:ア プライバシーセパレータは、同じアクセスポイントにつないだ端末どうしの通信を遮断します。インターネットからの攻撃や電波の届く範囲は、別の対策で扱います。

よくある質問

家庭用のWi-Fiルーターを会社で使ってもよいですか?
社員が数人の会社なら、使われていることは多いです。その場合も、WPA2以上、管理画面のパスワード変更、ファームウェアの更新、サポート期限の確認はそろえてください。来客用の分離が必要なら、ゲスト機能があるかを確かめます。
来客用Wi-Fiのパスワードは、なしでもよいですか?
パスワードなしでは、通信が暗号化されないことがあります。総務省の手引きは、WPA3やEnhanced Open(パスワードなしでも暗号化する仕組み)の採用を検討するよう勧めています。少なくとも業務用とは分け、利用者どうしの通信を遮断してください。
Wi-Fiのパスワードはどのくらいの長さにすればよいですか?
辞書にある単語を避け、文字数を増やすことが大事です。初期値が短い場合は長くします。社内での決め方はパスワードのルールの記事も参考にしてください。

無線LANの設問は任せて、確認と提出だけに

Moshiruは、打合せなしでテキストだけでお受けします。取引先から届いたセキュリティチェックシートに、御社の実態に合わせた回答を作ってお返しします。無線LANのように「一部できている」項目も、できていることと予定を分けて書きます。

回答代行を見る20問まで1.5万円・打合せなしメニューにないことを頼む文面で合意するまで料金はかかりません

参考にした資料

  1. 総務省「無線LAN(Wi-Fi)の安全な利用(セキュリティ確保)について」
  2. 総務省「安全な公衆Wi-Fiの提供に向けて セキュリティ対策の手引き(Wi-Fi提供者向け)」(2025年2月版)
  3. 総務省「自宅Wi-Fi利用者向け 簡易マニュアル」(2025年2月版)
  4. 総務省「公衆Wi-Fi利用者向け 簡易マニュアル」(2025年2月版)
  5. Wi-Fi Alliance「Wi-Fi Alliance introduces Wi-Fi CERTIFIED WPA3 security」(2018年6月)
  6. Wi-Fi Alliance「Wi-Fi security」
  7. IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版(2026年3月)付録「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」
  8. IEEE「IEEE 802.1X-2020 Port-Based Network Access Control」(2020年2月)
  9. IPA「情報処理安全確保支援士試験 シラバス 追補版(科目A-2)」Ver.4.0(2023年)